味のある短編と中編
★★★★★
シリーズ初の短編集(中編1+短編2)。なかなか味のある作品が並んでいる。
【少年と少女と白い花】
最初の作品が全体の半分を越える中編ながらロレンスが全く登場しないのが特徴的。ホロの過去編である。ふと知り合った少年と少女の「愛のキューピッド」になる話だが、これが何とも大仕掛け。狼だけが森の主じゃないんだなぁ、といったことも盛り込みつつ、旺盛に“吊り橋効果”を狙うホロのとんだ意地悪である。ただ、何とも覚束ない2人に対して、その覚悟を問い、試練を与え、これからも手を携えて共に歩むための勇気と信頼と愛情を確認したようにも見えるところがニクい。あまりにも無知で幼い2人の行く末をホロならずとも応援したくなる顛末である。
【林檎の赤、空の青】
食い意地の張ったホロに始まり、両替して買い物して“女の武器”で値引きして、最後に仕入れと販売のちょっとした小ネタを盛り込んだ小品。ストーリーよりも会話の妙を楽しむ内容である。ホロと両替商ワイズの掛け合い漫才に心穏やかでないロレンスが相変わらず面白い。これに限らずウィットに富んだやり取りが随所で見られる。
【狼と琥珀の憂鬱】
ホロ視点の破壊力は予想以上に凄まじい。体調不良のためなのか、それともノーラと仲良くするロレンスを目の前で見たためなのか、普段以上に余裕を失ったホロの心情が皮肉とともにキュンキュン描かれている。200を越す齢の落ち着きはどこへ?という乙女心が炸裂して悶絶必至のヤバさを呈している。同性ならではの心の機微を察し合う言葉の応酬(と、なんにも気付かないニブチンなロレンス)に続く最後の独白では「おいおい、そこまで想いがはっきりしてるのかい?」という“静かなる爆発”をたった1行で示している。本編でもたまに入れてほしいなぁ、ホロ視点。
完全独立な中編と、アニメの答え合わせ的な短編
★★★★☆
今回は脱線話の詰め込みです。この手の話は本編と時間軸がズレてしまうので普通ならその時にやってくれと思ってしまうのですが、これは話の視点を変える事で上手く回避しています。
短編2本はアニメで端折られてしまった部分が細かく描かれており答え合わせの様な、最初の中編は前巻でちょっと出てきた昔話の補完でこれまた完成度が高く、その後の物語に思いを馳せてしまいます。
面白かったんですが
★★★☆☆
面白かっただけに、少し残念に思う作品でした。短編三つが収録されているのですが、どれもホロの魅力が良く出た心地良い雰囲気の物語となっています。文章が秀逸で、特に書き下ろし短編、「少年と少女と白い花」は一気に物語に引き込まれました。けれども、その冒険にハラハラしただけに、オチで拍子抜けし、中途半端なところで終わってしまったような印象を抱きました。作中気になっていた二人のこれからや、少女の過去等が曖昧なまま終わってしまい、放り出されたような気になりました。もっと重いテーマが底の方にあったのに、短編のせいで書かずじまいになってしまったような…。これも全て、この話し一つで新シリーズが作れるのではないかと思えるほどに魅力的な話だったせいなのですが。ともあれ、十分過ぎるほどの良作なので買って損はない作品だとは思います。
最後の一行に大きな意味が。
★★★★☆
物語の本筋からは外れた、中編と短編計3編からなる「箸休め」的な巻です。
けれども、ロレンスと出会う前のことも含め、ホロのキャラクターをより掘り下げて描いているという点で、決して無駄な巻ではありません。どれも中々味わい深い。
しかし、本巻の一番重要な点は、初のホロ視点で描かれた最後の短編の、最後の頁の最後の一行に尽きると思います。
これまで、その「老獪」さでロレンスをからかってきたホロが、本当はどれくらいロレンスのことを好きなのか?その「好き」は旅の連れとしてのものなのか、異性としてのものなのか?
読者からするともどかしく感じられることもありましたが、ここで明確にその回答が示されます。
「ホロ視点」という提案は編集者からなされたとあとがきで書かれていますが、おそらく読者のニーズを汲んだのではないでしょうか。こうして作者と編集者がちゃんと読者の方を見ている限り、この小説は今後も期待できそうです。
短編がよかった
★★★★☆
内容については他のレビューにもある通り。
最初の中編「少年と少女と白い花」は主人公の少年と、その少年が淡い恋心を持つ少女の2人が
ホロと出会い一緒に旅する話。ただ、ホロの性格が悪すぎるというか、いたずらにしてはやりすぎ
なのでは?というところもあり、正直好感をもてませんでした。
次の短編「林檎の赤、空の青」はリンゴにまつわるロレンスの切り替えしがよく、結構楽しかった
です。
最後の短編「狼と琥珀色の憂鬱」は体調を崩したホロの視点からの話なのですが、これが最高。
普段ホロが何を考えてロレンスをからかっているかが良くわかり、また意外にホロが子供っぽい
性格なのがわかります。