そんなに難しいだろうか・・・?
★★★☆☆
レイコフ、フォコニエと並び認知言語学の土台を築いたと言われるラネカーの主著。この『理論的前提』編では、認知言語学の対極にあり今なお言語学界で支配的位置をしめる生成文法のアプローチにいかに不十分な点が多いかを指摘するところから始まり、生成が数学的完璧性の追求ゆえに捨象した部分にこそ言語の本質は存在するという前提にたって、その解明のための認知言語学の基盤となる概念を詳述している。アラン・クルーズなどが自著の中で難書と評しているが、確かに抽象度は高く、ボリュームもあるため決して楽な読み物とはいえないものの、かといって全く歯が立たないほど難しい本ではない。英語そのものは標準的(言語学の本にしてはやや難しいが)であるし、基本的な認知言語学の考え方を概観した後であればスラスラと読めるところも少なくないだろう。肝心の思想に関しては個人個人が判断するしかないが、伝統文法の品詞の概念を全て解体してしまい、言語は『音韻極と意味極の象徴関係』であり、全ては『連続的』と断じる頑固な思想は、賛同するしないに関わらず、読んでいて楽しめる。