第2次大戦史をよりよく理解するために有用
★★★★☆
大西洋での通商破壊戦は言うまでもないことだが、太平洋の戦いにおいても米国の護衛空母はしばしば登場する。しかし、それがいったいどの程度のものなのか、なぜあれほど大量に配備し得たのか、といった疑問を持つ人にとっては有益な情報を提供してくれるだろう。本書を読むと、旧日本海軍が米国の護衛空母と正規空母をしばしば誤認している事についても納得がいくのではないだろうか?
他方、大西洋において護衛空母の搭載航空機が対潜水艦にどのように役立ったかの具体的な記述は十分とはいえないが、それは本書の対象範囲外ということのようだ。また、太平洋における米国の日本に対する通商破壊、補給の妨害がどのようなもので日本はどのように航空機で護衛しようとしたかに関しての説明も極めて少ない。もっとも史実として航空機による護衛がほとんどされなかったのであれば、護衛空母というテーマの本書においてはやむを得ないだろう。
図面がありがたい
★★★★★
図面が多く収録されているのでイメージがよくつかめた。強いて言えば、せっかくだから図面索引(あるいは図面目次)がほしかった。
本書の直接のテーマではないが、ソードフィッシュなる複葉機が第二次大戦期にもそれなりに活躍していたというのは新鮮だった。
艦船ファンとして買って損はないと思います
★★★☆☆
護衛空母というと、これまで一定の知識は持っていたものの、本書のようにまとめられたものは少ないと思います。そう言う意味でこれが文庫で読めると言うことには価値があると思います。他の方が述べているように一部事実誤認がありますし、事実にしても筆者の思い入れかくどい表現があるのは否めませんので、まったく知識がない方が読んで誤解されるのだけが心配です。一方では商船から改造した艦と商船設計を利用して新造された艦の外観の相違点など、これまであまり注目されなかったであろうポイントは興味深く読めます。
インスタント空母の底力を思い知る一冊
★★★★☆
旧日本海軍の商船改造空母の大半が「正規空母の補助」にこだわりすぎ、直衛艦の低性能ぶりもたたって次々と沈められたのに対して、米英海軍の護衛空母は損害を蒙りながらも大半が激戦を生き延び、戦線の維持に大きく貢献した。本書では、その違いを、主に日米英3国における商船改造空母の設計や建造方式の比較により解説した良作である。油圧式カタパルトの威力やブロック工法の活用がもたらす工期の大幅な縮小が語られるなかで、読者は基礎的な工業技術の差が運命の分かれ道だったことに気付く。本書が主に米英の護衛空母を軸に展開しているのは、まさにその点を強調したいがためと思われるし、造船が工業技術の集合のひとつである以上、著者の論の進め方は適切と思われる。
ただし、通商護衛作戦をより適切に理解するためには、空母以外の護衛艦艇やその戦術についてもっと知る必要がある。大井篤『海上護衛戦』(学研M文庫)などと併せて読み進めることにより、本書の価値が初めて真に生きるものと信ずる。
私自身について言えば、小学生の頃に海戦記を読んで、戦艦「大和」がサマール島沖海戦で護衛空母を相手に苦戦するシーンに首をかしげたものである。その疑問が、本書を読むことで完全に氷解したのである。なるほど、カタパルトでマシンガンのように次々と飛行機を打ち出されては、前日に「武蔵」が航空攻撃で沈んだこともあるので、うかつに近寄ることもできないだろう。
世間は戦艦「大和」ブームで浮かれ気味だが、だからこそ本書のような冷徹な分析を読んで、頭を冷やしてもらいたいと思うのは私だけだろうか。
地味な軍艦のお話
★★★★☆
本の最初が1940年9月1日ドイツ軍がポーランドにうんぬんという
思いっきりの間違いから話が始まるため、一瞬読む気が失せるが
そこからは興味深い話が多い。
もともと欧州のU-ボート対策から生まれた米英の護衛空母だが、
太平洋では対航空戦が主力の戦いとなり、特に特攻隊との戦いが
メインとなってしまったが、大活躍・大奮闘している。
それに対し日本の護衛空母(日本にはこの呼称はない)というか商船改造空母
はカタパルトの未装備がたたり航空機運搬船となっていた。
そして船団護衛にも出るのだが今度はレーダー等の不備で沈めるべき
潜水艦に逆にどんどんやられてしまう。
それにしても資源の乏しい日本側がこういう簡易空母を活用し戦わなければ
いけないのに裕福な方がこういう簡易空母を活用しまくるというのは皮肉な話だ。
空母造っても飛行機が離着艦できないなんて笑い話にも程がある。
最初にそれくらいのことわかりそうなものだと思うのだが。
日本軍の致命的欠点がここにはあると言えるだろう。