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Shadow of the Hegemon (Ender Wiggin Saga)

価格: ¥663
カテゴリ: マスマーケット
ブランド: Tor Books
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不器用人間讃歌 ★★★★☆
 世界情勢が古くさいとか言っている方がおられるようですが、なんでそんなところにケチをつけるのか私には理解できません。
 最新の世界情勢から予想される未来をベースに描かれたとしても、面白みが増すとも思えない(それが作品のテーマではないのだから)。べースとなる世界観と乖離が生じる。冷戦当時と比較して複雑化した世界を描くのにページを割くのは、バトルスクールの子供たちにあてた焦点をぼやかしてしまう。
 だいたい、世界情勢なんてものはなにかきっかけがあれば、ガラリと様相を変えるもの(本書の中にもそういうシーンがありますね)。9.11以前に既に出版されていた、しかもSF小説に対して、9.11後の世界情勢をベースに云々言われるのは、ズレている様に思います。

 これだけでは、ちっともレビューではないので、レビューをば。
"頭のいい子供たち"の掛け合いの行間を読むのが楽しい小説でした。登場人物の大半が口が悪く、相手の言葉に対する切り返しの応酬が続くのですが、持ってまわった説明はないので、するすると読んでいると、個々の発言の意味が判らなくなります。そこで「ん?」と踏みとどまって彼らの言わんとすることを考え直してみると、ニヤリとできることでしょう。
 前作より人間臭さの増したビーン少年は、本書でも相変わらず何かにつけ苦悩しています。悩んでいるポイントは普通の人からはズレている(天才少年ですから)のですが、悩み方は「不器用な人間の葛藤」そのままです。ビーン少年に不器用な友人の姿を重ねて読んでいました。今度、彼に勧めてみようと思っています。
大人はどこに行った? ★★★☆☆
「世界が子供に牛耳られている世界」つーのは、さすがにちょっとリアリティがなさすぎる。いくら英才教育を受けているとはいえ、主人公たちとタメを張るだけの大人がろくにいないというのは、あり得ないだろう。「エンダーのゲーム」のように特殊な世界では成立した設定も、今回は無理がある。

とは言え、面白かったのはたしか。無茶な設定に目をつぶれば、十分に楽しめるエンターテイメントになっている。

愛しい者たちを失うことに苦しみ抗う少年、ビーン ★★★★☆
「エンダーのゲーム」には「死者の代弁者」~「エンダーのこどもたち」、いわゆる「Ender's SAGA」と目されるシリーズと「シャドウ・オブ・エンダー」から分岐する「ビーンの物語」の2つの流れがあり、それらは同じ1つの作品を起点とした全く異なるものである。
こちらを指して「姉妹編」と評するようだが、少し違うように思う。

それはそもそも「エンダーのゲーム」に2つの大きなテーマが両立していたことに由来するのだろう。
つまり、1)バトルスクールそのもの・エンダーの成長と2)異知的生命体と人類であり、前シリーズが2)を掘り下げたものに対して、こちらは1)の延長線である。

前作「シャドウ・オブ・エンダー」が、「ゲーム」との巧みなザッピングを駆使してビーンを魅力的に描いたのに比べると、正直やや退屈な展開である。
それでも、「自分の弱点が故に愛しい者たちを失うこと」に苦しみ抗う少年の姿には胸を打たれ、物足りないと感じながらも一気に読んでしまった。

一方、エンダーの兄、ピーターも「ゲーム」の時のような「危険な雰囲気」は影を潜め、むしろ「自分よりも劣っている(と本人が考えている)大人たち」に、「ロック」という仮面を脱ぎ捨てて正面から向き合うことによる不安と葛藤を中心に描いており好感を得た。といってもビーンと同様に、「何でこいつがあのエンダーの兄なんだ?!」的なややピーターには理不尽な(?)苛立ちを感じるが(笑)。
やはりカードは子供の心を描かせると一流なのだなと感服。

SF要素は「死者の~」系の方が深く魅力的だが、「お話」としては私はこちらのシリーズをお勧めしたい。
ビーンの「秘密」はやや蛇足だが・・・。
どうやらまだ続編があるらしいことですし(「Shadow's of Puppets」;未約。待てそうに無いので原著を買ってしまうか。)。

地球統一政府瓦解後の同盟戦争 ★★★★☆
プラス点

吉田秋生さんの『YASHA』の遺伝子操作された人類と異なる種である悲しさをテーマにし、人間とは何かを逆に問うた作品を思い出した。また権力を操れるという自覚を持った人間が、どういう風に世界を考えるか、という点ではおもしろかった。大抵の小説は、今現在の世界や法律ルールを当たり前のものとしてかかれるが、実際に世界戦略を検討するブレインたちは、血も涙もなくそういったルールを無視するだろうからだ。そういう意味では、三国志のような小説という作者の意図は、結構面白かった。

マイナス点

作者もあとがきで告白しているが、ビーンを描いた一連のシリーズは、三国志のような歴史の大きな流れと個人の思いを両立させたいという構想のもとに作られている。子供や人間を描く温かく鋭い視点はさすがといえる。しかし惜しいかな、いざ「世界情勢」「歴史」という全体の視点となると、読んでいる立場としては、視点が古すぎる。

他のレビューの方も書いているが、現代社会から約100年後で、ヘゲモンという地球統一政府が曲がりなりにも、対異星人を契機に成立した地球人類社会にしては、あまりに政治勢力が現在(というかワルシャワ機構と西側の対立、アジアの政治勢力の変化なし)と進歩がない。視点が古すぎて、少しげんなりしてしまう。これからの社会は、21世紀前半のアメリカ帝国による事実上の世界支配と、中国を中心とする緩やかなアジア共同体に対米国ヨーロッパ共同体、イスラム社会の連帯、そしてなによるもグローバリズム抵抗するテロリズムの世界的嵐等々が前提にされなければ、読んでてわらちゃうもん。

気になる点はあれど…読ませます ★★★★☆
 物語成立の前提だから仕方ないとは言え、あまりに紋切り型で断定的なロシアや中国の描き方や、
嫌いな人には鼻につくであろう宗教=道徳観など気になる点は少なくありませんが、カードの語り口の上手さは流石。
一気に読ませてくれます。
 「シャドー・オブ・エンダー」の直接の続編なので、前作を気に入った人は是非。