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時刻表昭和史

価格: ¥1,575
カテゴリ: 単行本
ブランド: 角川書店
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60代の感想 ★★★★★
私は著者より一回り年下だが、この昭和史には殆ど同様な感慨を持っている。多分、著者と同じ旅行熱があり、いわゆる完乗を未だに続けているし、歴史に対する思い入れが激しいからであろう。著作は既に殆ど読了しているが、著者にはもう少し長生きして、仮に乗り物に乗れないでも想像上で書いて欲しかったと切に思う。
リアルに浮かび上がる昭和初期の時代 ★★★★★
子どものころ著者が乗れない超特急「つばめ」を羨ましく眺めた様子、鮮烈に残る初めての東海道線での遠出の記憶。多くの鉄道ファンは、幼少時の原体験として、時代や世代が違っても、似たような想いを共有していよう。

戦争の悲惨さが描かれるがそれだけでなく、人々が戦中も逞しく生き生きとした毎日を送っていた姿が描かれる。本格的に戦時下に入る前の昭和初期の暮らしが、意外に豊かであったことも伺われる。大鉄道旅行作家の著者は、戦中の厳しい時期も、軍人ばかりの列車に肩身を狭くして乗りながら、長距離の汽車旅をやり遂げたりしているのだから、さすがというほかない。

戦争の苦難、庶民の生活、著者の並ならぬ列車への憧れ、その中で淡々と任務を遂行していた鉄道の姿。一見、強烈な主張がなくあっさりと読みやすい文章であるが、その中からは激動の昭和初期という時代がリアルに浮かび上がる。

背筋の伸びた時代に ★★★★★
鉄道作家という分野があるとすれば、その第1人者だった筆者の原風景を綴った一編。特急燕に寄せる憧れや、戦時下の列車運行状況への感慨など、自分の若い日で見たことを素直に綴っているのに好感が持てる。

特に、それぞれの職責を全うするという鉄道マンの姿は、日本人が見失ってきたものの最たるものではないか。そういう人々が支え、構成する社会への懐旧の思いもにじむ。決して豊かではなかった時代だが。何かを手がかり(この場合は鉄道)を生かし切っているので、好感が持てた。昭和前期から終戦後まで、一番日本の姿がわかりにくい時代を描き切っているといっていい。