この本は、内モンゴルで過放牧によるとされる沙漠化が問題になる中、中国政府が対策として打ち出した、この「生態移民」政策の効果を検証しています。
編者は、国立民族学博物館教授の小長谷有紀氏と内モンゴル出身で現在日本学術振興会の外国人特別研究員として日本で研究しているシンジルト氏、総合地球環境学研究所教授の中尾正義先生で執筆者としてはこれ以外に11名の研究社が参加しています。
現地調査したデータをもとに
・沙漠化は・大躍進時代の森林伐採、地球全体の気候変動、黒河流域(上流)の農業開発なども要因となっている可能性があるが、その検証が十分でないまま、少数民族の「生態移民」が突出する形で進行している。つまり、沙漠化の責任を少数民族にしわ寄せする形で行っている
・移住先の地下水消費が増えるなど、移住先での環境が悪化している可能性があるが、その評価はされていない
・貧困対策としての評価に対象者の精神的充足感が評価されていない
といった問題点が指摘されています。
政策が現に進行中である中で、国際共同研究として行われた現地調査データは貴重。