17年を経て色褪せぬ真実を暴く日本(国・人・政治)論
★★★★★
ベストセラーの日本辺境論の元ネタ足る17年前の氏の書籍の新版。本書の方がより深く緻密に日本・日本人・日本政治を暴いて(分析して)おり、知的興奮が誘発されました。
「(日本)民族固有価値=文化相対主義は世界普遍価値(World Values)=文化絶対主義に打ち倒される。戦後アメリカに日本が従属してWorld Valuesに従って生きねばならぬ悲劇を誰よりも理解していたのが三島由紀夫で、三島は民族固有価値を文化として防衛しなければならないと切実に願った。そして、文化の防衛は(日本語という)言語でかろうじて守られた」と説く副島氏の見解に深く共感します。
遣隋使として小野妹子を派遣した聖徳太子の時代からトップ3人程度しか世界における対外的位置(真実)を知らないできた日本という国(の真実の歴史)が世界(西欧)の歴史(覇権史)や普遍価値を基準に論じられており、「鉄砲伝来とはヨーロッパの(占領地としての)日本発見である」といった本質と真実が暴かれた稀有なる良書であり、一読を強くお薦めします。
読み応え充分
★★★★☆
必ずしも副島氏の意見にすべて賛同しているわけではありませんが、文献をきちんと
証拠として提示しながら論理を展開していくため、学問的にはその言説は納得できる。
副島氏の主張は後書きの中に集約される。「世界普遍価値の方が日本の民族固有価値
を打ち破って行くのである。それが世界史(ヘーゲルが唱えた)というものだからだ。
だからその際に七三の構えの、七で世界普遍価値に従い、国を開き、同時に残りの三で
民族固有価値を守り通さなければならないとするのが、私の政治思想的な構えである。」
田中角栄が失脚させられた真相や石原慎太郎が超国家主義者の烙印をアメリカから
押された理由は副島氏の指摘されるとおりであろう。
最終章、16世紀におけるオランダの在り方は今後の日本におおいに参考になると思う。
"日本国内でしか通用しない国内言論はやめにしてほしい"
★★★★★
「この本の英文書名は、'State of Unconsciousness' とする。
この「ステイト・オブ・アンコンシャスネス」とは、
直訳すれば「無意識(アンコンシャスネス)の状態(ステイト)」である。
この語の意味は、「自分が一体、何ものであり、
何を考えているのかを分からない人」という強烈な皮肉が込められている英語である。
そして、この英語は、
もうひとつ「自覚なき国家(アンコンシャスネス・ステイト)」という別の意味を持っている」
「財力が豊かでないと政治権力を維持できない。・・・
宋銭や明銭という形で畿内を中心に中国通貨を流通させた。ということは、武家権力が、
自分たちの政治権力を中華帝国の信用力の後押しと承認によって正当化していたということを意味する」
「武家の頭領である足利義満は・・・日本国内の政治的・軍事的実権を握っていた。
しかし日本国の形式上の最高の権威は「帝(みかど)」であった・・・
だから当時の将軍たちは、どうしても、
国内の天皇よりももっと一段上の政治権力者である東アジア皇帝である中国の皇帝から、
ある種のお墨つきをもらっていたのだ、と解釈するのが正しいと私は考える」
「江戸の終わりまで、日本の儒学者の知識人たちは、ずっと自分の中国名を持っていた。
例えば、新井白石は「源君美(げんきんみ)」と称した」
「どうして、たったこれだけの真実を、これまでの歴史学者たちは私たちに教えないのだ」
「小沢一郎が提唱したのが「普通の国」(ノーマル・カントリー)になるべきだ論である。
この normal country「ノーマル・カントリー」は正しくは「正常な国家」と訳すべきだ。
それを誰か知らないが、故意に×「普通の国」などというおかしな言葉にした。
「正常な国家」とは「自分のことは自分でする国」という意味である。自立した国ということだ」
オランダの歴史を学びましょう・・・
私的には副島隆彦氏著作の中で最高作!
★★★★★
政治とは何か、政治活動とは何か、日本人は政治の何がわかっていないか、について真正面から考察しています。
東大の先生が書いた(古典的に定番の有名な)政治史とか政治学のテキスト読んでも、ピンとこなかったのですが、やっと腑に落ちました。本書は、生々しい切れば血が出るような人間集団の営みとしての、人間集団を動かしていく力学としての政治というものを、無知蒙昧な私に把握させ、認識を広げてくれました。
収録されている論文は、「なぜ日本人が英語ができないか?実は日本は、脳を英語から守っているのかも」論とか、「政治のみならず社会科学後進国日本人読者が理解できるように翻訳するには、原文にない解説や説明を訳注ではなく地の文に組み込んで訳さないといけないので、原文の2倍以上の長さの日本文に変換が必要」というよう翻訳論とか、必ずしも政治に関しているようには見えないものもありますが、これらの問題も、やはり大きくは政治に関わってくるのです。
私は、副島隆彦氏の著作は全部読んできました。英語関係ならば1980年代終わりあたりから。政治関係ならば90年代から。金融関係ならば21世紀にはいってから。折に触れて何度も読み返してきました。本書は、『世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち』とか『ハリウッド映画で読む世界覇権国アメリカ』などと並び、副島氏の著作の中で最高です。私的には最高作です。
本書は、1990年代始めに某出版社から出版されて以後、2回も出版社を変えて発表されてきました。この本に感銘できる、まっとうで勉強熱心な編集者が、いれかわりたちかわり出現するというのも素晴らしいことですね。
「日本国民であるなら、必ず読まないといけない本」
★★★★★
民主党政権になって密約の話が出てきてるが、今出てきているのは氷山の一角なのであろう。
外交を考える場合だけではなく、ビジネスで海外と付き合っていくビジネスマンとしても、頭の中に入れておくべき内容。
今後の日本及び日本人の外国との付き合い方を考える上の参考書として、学生や若い人々にも必ず読んで欲しい。