人間工学の重要さと機械の面白さを伝えることのできる優れた機械工学の副読本
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自転車は人間の力を有効に引き出して速く走ったり、重い荷物の運搬に使ったりできる素晴らしい発明品です。
日本で流通する自転車の本は、自転車の選択に係るもの(自転車および関連商品の販売を目的としたものを含む)、整備に関するもの、使い方に関するもの(サイクリングコースの紹介、トレーニングや健康づくりなど)に関するものがほとんどです。そして科学的な視点から扱う本は服部四士主著『自転車の科学―メカから乗りごこちまで』(1982年、講談社、絶版)と、ふじいのりあき著『ロードバイクの科学―明解にして実用!そうだったのか! 理屈がわかれば、ロードバイクはさらに面白い!』(2008年、スキージャーナル、MOOK)と極めて少ない現状にあります。
本書の第1編の"Human Power"では自転車の歴史に続いて自転車の駆動源となる人間のパワー(研究成果を含めて84ページ費やされている)、第2編の"Some bicycle physics"では自転車の力学・運動学、そして機械工学(275ページ)、第3編の"Human-powered vehicles and machines"では人間の力を用いた様々な乗り物(人力飛行機を含む)が解説されます。人間と機械の組合せによって成立つ自転車は人間と機械の両方の理解が必要ですが、上記の概要のようにこれに対応するもので機械工学を学ぶ学生に副読本として是非、薦めたい本です。無論、自転車を乗ることについて深く知りたい人にも薦めたい本です。