お得なセット
★★★★★
前半「暗黒星」は1939年の中編。明智が登場するスタンダード(スタンダードすぎる)な乱歩作品で、どちらかというと子供の頃に”少年探偵シリーズ”を読んでいた人が楽しめる内容になっている。暗黒星とは「真っ黒の巨大な星が地球に接近したとき、実際に衝突するまで人間は気付かない」という意味で、そういう不気味なコンセプトのもとにストーリーが展開する。
後半「闇に蠢く」は1926年の中編。初期・乱歩の真骨頂が発揮された一品となっていて、とある山の中のホテルで起こる奇怪な事件を描く。プロットは粗く、英米のミステリーに慣れている人は低評価を下すかもしれないけれど、繊細で卓越した文章や、乱歩独特の、友達が隠している秘密のビデオを観てしまった時のような雰囲気はたまらないし、中編では乱歩のベストにこの作品を挙げる人もいる。特に冒頭の演出は必読。