本書のキーワード「コモンズ」は共有性、すなわち多数の人々によって平等に保有または享受されることを意味する言葉だ。話はインターネットの創生から始まるが、電話網に代表されるワイヤードにおける「コモンズ」の寄与、そして無線世界でのアプローチなどを踏まえ、「コントロール」するべきものとするべきでないものを明確に定義し、インターネットでの所有権のあり方について議論を行っている。昨今のアメリカでは音楽の配信・映画の配信に伴う著作権の問題や一部企業の製品による独占的な市場のコントロールの問題に対して重要な判決が下されているが、このような事態に対して著作権は企業が利益を確保するための手段に成り下がり、本来の目的から大いにゆがめられていると世間からも非難の声が上がっている。ましてやアメリカではミッキーマウスの著作権に代表されるように行き過ぎた面が見られる。
本書はそのような流れに対し、最も進歩を促すリソースの所有形態を提示している。当然、本書の意見については企業としては賛同できない部分もあるかもしれない。しかし自社の製品を生み出す源泉がいったい何であるのかを考えれば、そして市場の成長を促すものが何であるのかを考えれば、行き過ぎた所有権はトータルでマイナスに働くということに気が付くだろう。
本書はインターネットでの所有権のあり方について、その意味と理由を含めて学ぶことのできる書籍として大いに役立つだろう。インターネットを信奉するすべての人におすすめしたい。(斎藤牧人)