神話の理性
★★★★★
非常に合理的である。著者の説明の仕方が。やたらと長ったらしい神様の名前や、ややこしい親子関係、初心者にはちょっと不思議すぎる話の筋などなど、日本の古代神話(記紀)がもつ難解さを、著者は、すぱすぱと手際よく整理し、納得のいく解説を加えてくれる。著者のこの新書シリーズ(ほかに、「神道」や「武士道」などあり)で勉強しながら毎度おもうことだが、豊富にのせられる図や表によるまとめが、本当にわかりやすく、ありがたい。
まあ、「神話」を学問的に説明するために、(比較)神話学の知見をもちだしてきたり、神話成立期の政治史にふれたりするので、真に神秘的な世界を古代神話に求めている人には、少し興ざめしてくる部分があるかもしれない(これはペルシアの神話から伝わった物語で、云々)。とくに、本書では一貫して、朝廷・皇室の権威づけとしての神話、という視点を重視しながら解説をすすめているので、ここら辺、やけにリアルに語るなあ、と素朴に感じてしまう。単純に神話の物語性を楽しみたい方は、別の本にあたった方がいいだろう。記紀を知識・教養として知るための入門書としては、断然おすすめするが。