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東京少年 (新潮文庫)

価格: ¥580
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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疎開文学の傑作。 ★★★★★
疎開文学に傑作は二つしかありません。
この作品ともう一つは「冬の神話」です。
いうことなしの傑作ですが、
暗い記憶の第一部よりも東京少年が東京に帰りたい帰りたいの第二部が特に素晴らしいです。
少国民の生活と無秩序であることの怖さ ★★★★★
才能もなく努力すらしないのに、今の社会格差を戦争で一掃したらバラ色の世界が待っている、と考える無智な輩が跋扈する危険な時代になった(一生懸命生きている人は、たとえ恵まれなくてもこんな愚考はふつうしない)。こうした連中は穏便・冷静な意見には一切耳を貸さないから、たとえ行動に出なくても心情的には暴徒と変わらない。しかし、戦時の社会では、より残酷な格差が一層不合理な形で現れる。綻びはあってもセーフティネットが張られた今の世で、努力もせず収穫を夢見る人々のうち、戦争で浮上できるのはごくわずかであろう。恐らく大多数にとっては、一層悲惨な現実が待っている。敗戦国の国民であればなおさらであるし、戦争に勝ったとしても、一方で必ず敗者がいるのだ。敗者のことは知らない、というなら、それは今この時に自身が負っている不幸を戦争によって他者に転嫁したいに過ぎない。

この作品は、彼が実体験した疎開生活の記憶に基づいた自伝的小説である。解説者の言うとおり、集団疎開と縁故疎開との両方を経験した小説家はまれである故、誠実なルポルタージュを兼ねた本作品の歴史的価値は高い。但し「疎開者の悲惨な日常」といった記述は最低限に留められている。私は、厭戦・反戦小説として読むよりも、むしろ人間性の本質への懐疑、おとな・権力・広報への不信といった、より普遍的な作者の怒り、戦後も日本人は何も変わらなかったという彼の絶望を読むべきだと思った。事実に基づいた作品や評論で真価を発揮する作者らしい名作である。
もうひとつの『少年時代』 ★★★★☆
◎ぼくにとって、<集団疎開>は…略…戦争そのものであった
◎自伝的小説ではあるが、自伝ではない
◎一人の少年が戦争末期、敗戦の激動期に、何を考えて生きたかが、作品のテーマ…略…少年の内面の戸惑い以外を書くつもりはなかった
〜あとがきより〜

あとがきで著者が語るように、少年の内面の戸惑い以外は書かれていない。
特に抑揚もなく、映画『少年時代』のような黄昏た物語を想像していた分、肩透かしをくらったようである。
しかし、国民学校6年生が疎開先で考え、感じたことが率直に語られていて、その時代を追体験しながら読むのは楽しかった。

真珠湾攻撃で『もやもや』が消え、東京大空襲で疎開引揚が伸びてがっかりし、新たな疎開先で敗戦を迎えて自分が信じた『日本の正義』を疑い、帰京を熱望して父親と遣り合う。

二十六歳の私が体験し得ない先の『戦争』が、ここにはしっかりとあった。