この本が目にとまりました。自殺が起きた後に、遺された人をどのようにケアするかについて懇切丁寧に取り上げています。私自身、父を自殺で亡くしていることもあって、無意識的にこんな本を探していたのでしょう。わが身に当てはまるところがいくつもありました。私と同じような経験をした人に、ぜひ一読を奨めます。家族が自殺するということは本当に大変なことです。一生背負っていかなければならない傷です。でも、この本が新興医学出版社なんていう会社から出ているのは？？？です。これは、医学書の出版社ですか？　大手の出版社が一般書として出してくれて、もっと安い価格で、幅広く手に入らないと、意味がないのでは、本来読んで欲しい対象の人の目にとまらないのではないかと、老婆心ながら心配してしまいました。企画意図は素晴らしいし、内容もよいものの、販売戦略はお粗末かな。でも、これがいいのかもしれません。あまりにも、世間の先を行き過ぎて、大手の出版社では引き受けてくれないだろうし。

この著者はこれまで自殺予防の著書を数多く上梓してきた。しかし本書はどんなに予防に力を入れてもわが国で年間３万人を超える自殺者がいるという厳然たる事実に対し、真っ向から遺族の心のケアについて限局して論を進めている。愛する人を自殺で喪った遺族を善意から励ましたり、職場の同僚が自殺して打撃を飢えている人に何ら心のケアが行われていないのがわが国の現状だ。こういった遺族という個人や会社・学校などの組織でどのような取り組みをすべきか？　これまでの著書とはひと味違った観点からわが国のタブーにメスを入れた１冊。◆本書でいちばん心に残った箇所は、著者が遺族に対して「悲しみを乗り越えようとするのではなく、悲しみを感じ続けることが故人への供養になると考えてはどうか」と助言したところである。

どんなに周囲の人間が力を尽くしても、残念ながら自殺を完全に無くすことはできません。また、自殺は自殺した当人だけでなく、残された周囲の人間にも問題を残すのです。「もっと自分が○○していたら・・・」と自分を責め、時には自己破壊行動を取ることもあります。本書は、自殺により大切な人を失った人の心のケア（ポストベンション）の本です。専門的なことも書いていますが、読みやすいので一般の方でも読めます。よくありがちな無理な励ましや慰めがないので、哀しみに打ちひしがれている方は喪の作業の一つとして（ただし、無理はせずに）。また、本書の珍しいところは、セラピストなどのために患者さんが自殺で亡くなった場合の対処法が書かれている点です。字が小さめですが、「自殺の危険」と共にお薦めの本です。宗教の勧誘やオカルト集団に対しての注意を喚起している点など、なかなかです。目次はもう少し、詳細なものであった方が読みやすいし便利かな、と思いました。