古代の神話が現代女性の心を描き出す。
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この神話が示しているものは、データーベースに示されているような病的な女性の心理解説ではない。古代においてすでに、母系社会から男系社会にとって変わられたとき、女性も男性原理に都合のよい女性像となる。それが、冥界へ下る前のイナンナである。しかし、彼女は冥界へ下り、自らの影となっている女性性と出会い、そこで死の苦しみと出会う。それにより、イナンナは復活を遂げたとき、光と影をともに併せ持つより完全な女性へと変貌する。
この神話は、現代女性が、男性原理の中で失った女性性を取り戻すために如何に痛みを伴うかを痛切に描き出している。また、男性の中で虐げられている女性性を生き返らせるときの苦しみもまた同様のものであるといえよう。