エピローグには感動しました
★★★★★
佐木隆三氏の作品は、「復讐するは我にあり」しか読んだことがありません。もう30年近く前に読んだハズですが、その重々しい内容が未だに印象としてはっきりと残っています。
本書は、山根一眞氏の「メタルカラー烈伝 鉄」に出てきた「宿老」という言葉に惹かれて手にしましたが、佐木氏がこのような文章も書かれる方だと知って良い意味で大変に驚きました。
内容については、宿老の一生を追う本編と、佐木氏自身が宿老の足跡をドイツに追うエピローグから成っていますが、本書は「エピローグ」の章の存在によって、よりその作品性が高まっていると思います。(ネタバレになるために詳しくは書きませんが、六十代の男二人が涙にくれる場面では、思わずこちらももらい泣きいたしました。人の縁とは不思議なものです。)
蛇足ですが、前出のメタルカラー烈伝には、現代の宿老が出てきます。興味のある方はご一読をおすすめいたします。
鉄は国家なり
★★★★★
日本の高炉とともに生きてきた老技術者の話
ドイツにも留学しているんだよな
宿老という風格のある言葉が似合うのは流石鉄は国家なり、というところだ
またお雇い外国人というと学者や上級エンジニアだけってイメージがあるけど
製鉄所では職人も雇って日本に呼び寄せていた
そういう人たちのDQNというか血の気の多い実情も
自分の生き方にまっすぐな、熊さんに感動
★★★★☆
これからは鉄の時代。
農村に生まれ、98歳でなくなるまでの
その後の人生をすべて高炉と共に生きた
”宿老・田中熊吉”の人生のお話です。
高炉の中でコークスと共に還元された
1200−1300℃の溶けた鉄は、
その下に溜まっていきます。
そして、灼熱の輝きを放ちながらドロドロと
流れ出る鉄。
「鉄は国家なり」とうたわれた時代。
その時代にこんな人がいたんだぁという思いと共に、
その素直な生き方に感動します。