この書のなかでBerkleyはPhilonousに自らの「非物質論(inmateriarism)」を代弁させている。彼と渡り合うのがHylasだが、初版発刊当時に流行した、懐疑主義批判や形而上学批判を示し、物質主義の思想を体現している。この対話のなかでこのinmateriarismはかなりの説得力を読者にあたえていく。問題となるのは第三部(第三対話)での「神(god)」の存在であり。この書全体の根底にある問題に繋がっている。またこの問題は哲学・思想史をつうじて問題とされるものでもあるので、読んでおくべき著作であることは自明のことと思われる。
また第一部ではロックのいう「第一性質(primality quolity)」と「第二性質(secondaly quolity)」に関する検討が行われ、その区別が否定されていく(存在ではない!)。このことからもロックに関心のある方は特に興味を抱くはずである。
クロインの司祭であったバークリーが自らの宗教観、哲学を世に問うた「Principles of Human Knowledge」の解説書とも言うべきこの書の醍醐味は、なんと言ってもやはり、その鋭い論証であり、私たちが持つ現実に対する素朴な信念や常識から解放し、ついには「神の存在証明」にまで導いてしまうところに在る。
この書はバークリーの入門書であるだけでなく、「はじめての哲学入門」でもあるといえよう。
大学入学したての人にも手軽に読めるので、おすすめ。ただ一部古い英語の用法があるので注意。