1971年3月5日から7日にかけて、唯一無二のソウルの女王は、ビル・グレアムの世界的に有名なロック・コンサート会場のフィルモア・ウェストでヘッドライナーを務めた。魅了された聴衆と女王とのつながりは間違いなく緊密で、このコンサートはアレサ・フランクリン自身の並ぶ者のいない伝説にとっても、ソウル・ミュージックの普及にとっても、突破口となった。ディスク1には、オリジナルの1枚のフォーマットだった『Aretha Live At Fillmore West』を収めている。以前の2回におよぶ編集版にアップデートしたもので、たまたまコンサートを見にきていたレイ・チャールズとアレサがデュエットした貴重な瞬間「Spirit In The Dark」も収録している。ディスク2は、ライノ・ハンドメイドからリリースされていた以前は限定版でしか聴けず、廃盤となっていたレアな『Don't Fight The Feeling: The Complete Aretha Franklin & King Curtis Live At Fillmore West』で構成されている。
白人聴衆にクロスオーバーするソウルクィーン
★★★★★
30年以上前の10代の頃からこのライブ作をは知っていた。サザンソウルに深く傾倒した時も"I Never Loved A Man..."は愛聴していたが、本盤のことは敬遠していた。ロバータフラック的なニューソウル風のジャケットが好きでなかった。外見的に判断して、中身もソウルフルではないだろうと先入観を抱いていた。しかしながら、今回初めて聴いてみて、やはりソウル名盤であると認めざるを得なかった。
まず、ライブとしての臨場感が凄い。全力投球のアリサと、彼女を盛り上げる熱い聴衆。この両者のコラボレーションがもたらす一体感が感動的だ。熱狂的でありながらも、どこかダウンホームな落ち着きも兼ね備えている。じっくりと聴かせる作品でもある。
時は1970年代初頭。希代のソウルクィーンを白人聴衆にアピールするため、アトランティックの創始者ジェリーウェクスラーは、フラワームーブメントまっただ中のサンフラシスコにアレサを連れてきた。このプロデューサーの目論見はずばり当たった。白人市場にクロスオーバーさせるために、白人アーティストのカバー作品が約半分収録された。アリサオリジナルにサンドウイッチされる形で収録されているそれらの曲は、ゴスペル風にアレンジされこの上なくソウルフルに演奏されている。その塩具合の塩梅がたまらなく良い。フィルモアウェストに集まった、フラワーチルドレン達とのコミュニケーションは最高潮に達する。モチロン、アリサのオリジナル曲も、伝統的なソウルショウマナーに則り、ドス黒く光り輝く。
タイトでシンプルなバックの演奏もグルーブ感を際立たせている。特に一曲目の"Respect"。天国からオーティスの霊を呼び戻さんばかりのノリノリぶりだ。(途中のアリサの語りも何故かオーティスそっくりだ。)アップテンポの曲では異常なほどの盛り上を作り、バラードでは堪らなくメローなムードを演出する。ニューソウル的なテイストも加わり、アリサも今までの歌世界の幅をより一段と広げている。ヘビィなサザンソウル的な歌唱に、より多くの聴衆に訴えるポピュラー的な魅力を上手く加味している。
終盤でのレイチャールズの登場でショウは佳境に到達する。このソウルキングとクイーンの一期一会の出会いが、リスナーを桃源郷に連れて行く。至上のソウルミュージックが演出される瞬間に昇天する。
リイシューにあたり、オルタネイトテイク、アウトテイクが二枚目のCDに収録されたが、それらの曲の出来もオリジナル曲から成る1枚目のCDに全く劣らない。だが、この音楽市場に新風を送り込んだライブの全貌を知るには、まだ足りない。やはりコンプリート盤を聴くべきだろう。そこではフィルモアウェストをアポロ劇場に変えた、このソウルショウの本質が否応もなくあふれ出ている。それもまた良しである。
アリサ最高のライブパフォーマンスの一つであり、かつブラックミュージックを白人市場にクロスオーバーさせた歴史的価値をも持つ一枚でもある。ソウルファン、ロックファンともに脱帽させる内容であることに疑いはない。
待っていたデラックスエディション
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アレサにとってはもちろん、ソウル/R&Bのライヴ盤の金字塔として知られる本作、もともとは3日間のコンサートからのベストテイクを一枚にまとめたものだったというのは有名。
新たなDisc 1は従来のものでも最大の聞き所のひとつだった#9「Spirit in the dark(Reprise)」を長尺のノーカットバージョンに差し替えた内容。この価格なら、これを聞くためだけにでも買い直す価値ありだろう。
聞いたことの無い方なら迷わずこちらを選ぶべきなのは言わずもがな。
Disc 2が未発表曲や不採用テイクを詰め込んだものになっているがクオリティは全く見劣りしない。
従来版のライナーでも割愛されたことが触れられていたDisc 2の「Call Me」「Mixed-up Girl」なども素晴らしいし、アウトテイクでは聞きなれた演奏との違いよりもむしろアレサのパフォーマンスの高いレベルでの安定ぶりに驚かされる。
超ハイコスト・パフォーマンス!Aretha Franklinの傑作ライブの大幅エンハンス版
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Rhino Handmadeから発売されたFillmore Westのライブ完全盤4枚組,"Don't Fight The Feeling"は全61曲という強烈なボリュームであったが,全世界5000セット限定という性格ゆえ,現在はオークション・サイトやマーケットプレイスでも相当の高値で取引をされており,よほどの根性がないと手が出る代物ではない。そこへ本作の登場である。2枚組で収録曲は23曲と従来版から倍増以上,同じくRhinoから再発されたKing Curtisのエンハンス盤の14曲の収録と合わせると,ほとんど同じ曲が3回収録されている完全版(3日分完全収録の弊害とも言える)にわざわざ大枚はたかなくとも,そのコアとなる演奏をはるかに安価で楽しむことができるようになっている。完全版に大枚はたいた身としては微妙であるが,これぞコレクター以外のリスナーにとってはあるべきリリースの姿であろう。Rhinoがまたしてもやり遂げた快挙である。
全くの新装版
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単にオリジナルの1枚目にボーナスCDを足した2枚組ではありません。
1枚目からして別バージョンが入っています。
R.チャールズが客演した「スピリット・イン・ザ・ダーク」は
19分のロング・バージョン!その他も別の日の録音が混ざっています。
もちろん2枚目は全部ボーナス・トラック。
つまり全くの新装版と思ったほうがいいです。
「デラックス・エディション」と言いながら単に水増ししただけのブツが多い中、この値段でこの内容はスゴイ。
さすがRHINOと再認識しました。
以前ライノ・ハンド・メイドから出た4枚組の完全版まではどうも・・・
と言う方はうってつけの内容です。
この音質、値段でこの内容ですよ、迷う事ないでしょう。