美麗な時祷書の数々
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文庫本のような大きさで、手元に置いて日々使った祈りの書である時祷書の絵だけを、140点もオールカラーで並べたペーパーバックです。
貴重な写本を数多く収蔵している大英図書館の蔵書の中から、ページのバラではなく本としてきちんと残っている物の中から掲載されています。
時祷書には、サイズは小さめでも美しい色彩の素晴らしい絵が多く含まれているものがたくさんあり、
とりわけ15世紀に、特にフランスで多く生産されました。祈りという文脈上、絵のテーマは聖書の場面が多く、
マリアへの受胎告知、うまやで産まれた御子、誕生した御子を訪問する東方の三博士、キリストの十字架上の磔刑などが非常に多く描かれています。
本書は短い序論の他は文章はなく、ひたすら時祷書の絵を楽しめる構成です。それぞれの写真には、
描かれた場面(「受胎告知」など)、制作地・年代、大きさ、写本番号とフォリオ番号などが記載されています。
この頃には青をまとうことが多くなっていたマリアの、ラピスラズリなどを用いた本当に美しい青色の服や、
絵を取り囲む細かい装飾もきれいで、鳥や動物、時には虫や妙な怪物のような生き物の装飾も施されています。
時祷書自体小さいものなので、なるべく原寸大で掲載した本書も通常の単行本程度の手軽な大きさです。
美しい中世写本の絵をこれだけ多く、しかもオールカラーで手軽に見られる本として、中世ヨーロッパ全般やキリスト教、西洋美術に関心のある全ての方におすすめです。