インドのど派手な幻獣の由来がわかります
★★★★☆
インドや東南アジアを旅しているとよく見かける、一見不気味な獣たちの像。
知らない人には十把ひとからげに見えるこういった像ですが、もちろん、それぞれに由緒があり、それがそこにある意味があるわけです。
そんな、馴染み深いようなそうでもないような「幻獣」について、豊富な写真とともに説いていくのが本書です。
登場するのは「キールティムカ」「マカラ」といった聞きなれない(でも実は、意外と見たことがある)ものから、竜や一角獣といったわりとメジャーなところまで、いろいろ。
舞台はいちおう世界各地ですが、インドが過半数といった感じです。
「シャチホコって古代インドの幻獣「マカラ」だったのか!」
「日本の鳥居ってインドに起源があるんだ」(これは諸説あるらしいですが)
と、思わぬ発見があって面白かったりもします。
楽しい幻獣
★★★★☆
著者は仏教学・インド学の専門家。
本書は、豊富なカラー写真を使いつつ、「幻獣」の歴史や東西伝播について論じたもの。
取り上げられている幻獣は、キールムティカ、マカラ、ガルダ、キンナラ、一角獣、メデューサなど。ちょっと馴染みのないものもあるかも知れないが、キールムティカとはインドなどで見られる顔だけの幻獣である。装飾としてしばしば彫られるのだが、その起源と意味をたどり、メデューサなどと結びつけていく展開は面白いの一言に尽きる。マカラはキールマティカとともに描かれることの多い海の怪物であるが、「水」のイメージを体現しつつアジア各地で変容していき、日本の金比羅にもつながっていく。
取り上げられている幻獣の姿そのものが面白く、なかおつ文化的にアジア全域、さらには西洋世界をも視野に入れて放してくれるのが魅力的。
素敵な幻獣である。