漢字製造現場の目撃者の証言
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白川静は卜文・金文の記述を全面的に信頼している。しかし、いつの時代のどんな文章・記録であっても内容の疑義を問うことは科学の基本だろう。例えば松本清張は小説なんかよりこうしたことが最も得意なのだが、それは本題でないのでここでは述べない。特に卜文・金文で語られている範囲の問題がある。詳しくは、同じ白川静の著書・「文字逍遥」の書評で私が述べたが、その内容をここで言い換えて要約すればこうなる。卜文・金文が最終的に主張していることは、たとえて言えば ”私は猿が人に変化したのを目撃した”と証言しているようなものである。少なくとも白川静はそう理解したと思わざるを得ない。この”変化”を”進化”と呼ぼうが呼ぶまいが、その本質はたいしてかわらない。卜文・金文がこうした証言をすることはもちろん、自由である。しかし、重大発言を証言した以上、そこには発言内容の検証作業が欠かせない。その肝心な松本清張が最も好きな検証作業を白川静は行っていないのだ。なにはともあれ、「宇宙に開かれた光の劇場」というキーワードをネットで検索してほしい。すべての疑問が解けるはずだ。