血の通った言葉を久々に目にした感動の一冊
★★★★★
ノンフィクション作家の沢木耕太郎のインタビュー力を感じさせる一冊。
人への好奇心、それが歴史的人物だけでなく、一般には知られていない裏方の人物へも同様の好奇心を持って追求する取材姿勢が、沢木作品の特徴と言える。
著者自身が言う「義侠心」が、彼の作家活動のモチベーションの一つになっているのがよくわかる。
強者がもてはやされがちなこの世の中で、弱者にも視線を向け、理解しようとする義侠心を感じ、ほっとする人の温かみを思い出させてくれた。
著者自身は、「一人称と三人称が混在」した点に不満を抱いていて、次作となる「テロルの決算」では完全な三人称で作品を完成させたようだ。
しかし読者からすれば、一人称が混在していた事が沢木耕太郎自身の人柄を存分に表わしていて、30代の清々しい感性と、
文中で語っている「良きルーザー(敗者)」たちに向けた優しいまなざしが伝わり、心を温かくしてくれた。
政治家の言葉は形骸化して、心まで届かない事が多い。
公人の立場にありながら、池田勇人元首相が読んだ弔辞や、銀婚式での挨拶を引用した部分は、
初めて目にする人の心をも打つような友情の言葉に溢れ、それを目にする事ができただけでもこの本を読んでよかったと思う。
危機の宰相
★★★★★
大変力のこもった力作でした。是非読んでいただきたい!
時代背景からよく分かりました
★★★★★
1960年代に当時の池田首相が提唱した「所得倍増計画」が生まれた背景について、主に3人の人物を中心に書かれています。
この頃の時代背景や、何故このような考えができる人物が登場したのかということが詳しく取材されているように感じました。
登場人物は多いですが、それぞれの人物について簡単に解説してあり、そんなに苦じゃありませんでした。
このような人物が現在にいたら、どのような政策を打ち出すのかというのを想像してしまいました。
政治をテーマにしたノンフィクションとしては、書き方、取材の仕方等が他にはないものであると感じました。
渾身の一作。
★★★★☆
長年かかりようやく陽の目を浴びた労作。
若き日の著者の熱い思いが込められており、若い感性だからこそできた作品なのかもしれない。
日本経済の爆発的な成長を支えた3人の活躍をつづったストーリーは、当時を知らない私としては非常に沸き立つ気持ちにさせる小説的な話でもあるとも感じた。それほど劇的な時代だったのだろう。
その3人の関係を細かな取材から明らかにし、ひとつの作品としてまとめあげたことは、非常に価値があることだと思う。
ノンフィクションではあるが、そう感じさせない、しかしノンフィクションだからこその圧倒的な登場人物の存在感がそこにあった。
調べ尽くして書かれた本
★★★★★
池田勇人内閣の「所得倍増計画」がどのような経緯で生まれて実行されていったかに光を当てた書物。詳細なインタビューや調査に基づいた事実が説得力をもって説明されており、迫力があった。
夢も希望もない現代からみれば、池田首相が日本を統治した時代というのは、まさに黄金時代だった。