ベテランの至芸を見よ
★★★☆☆
『さよなら三角』『ジャストミート』『冬物語』『部屋においでよ』『やったろうじゃん!!』……のベテラン作家・原秀則を、先端的な現代マンガ評論は決して相手にしないであろう。(WIKIPEDIAにすら、「画の使い回しが非常に目立つ」などと書かれる始末。)
しかし原が昭和時代からコンスタントにヒットをとばし、現在も人気連載作品を持つ、小学館少年誌青年誌の一方の重鎮ともいうべき存在であることは誰にも否定できないのである。
予定調和を破り、マンガ表現の前衛を突っ走る作品の対極に、原マンガは屹立している。
可愛い女の子と定型的なストーリー(基本的には人情噺)と適当に整理された描写、そしてテーマは野球。
これで
読ませる
というのは考えると凄いことである。
いくら「大衆は馬鹿だ」といっても、飽きやすいのも我々大衆ではないか。
原秀則のマンガは何故うけるのか、そして何故現に面白いのか、人民による文化革命を目指す(<はあ?)マンガ評論は説明するべきだろう。
原秀則の本質は、この短編集に出てくる「ジュンイチロー」みたいな天才なのだと思うよ。