人間の魅力とは何か。首尾一貫した、城山氏の人間性に対する興味と語り口に心動かされる一冊。
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人間の魅力や人間の強さとは何か。
一介の文士として城山三郎氏が福岡県のある高校で行なった講演をもとにまとめられた一冊。
御木本幸吉・広田弘毅・浜口雄幸の三人のエピソードから始まり、伊達政宗や毛利元就、渋沢栄一、田中正造など歴史上の有名な人々から、ラスベガスの舞台で見た芸人、中国のある文化相、同時代を生きた作家たちまで、名前を列挙するだけでも両手では足りないほど。
さらに驚かされるのは、城山氏の首尾一貫した視点と語り口にある。
描かれた人々はまるでみな城山氏の恩師か友人であるかのように人間味に溢れており、有名無名やその功績の大小に拘わらず、等しく心からの尊敬を込められているのがひしひしと伝わってくる。
魅力ある人間の生き方として、「人間への尽きせぬ興味」を持ち、「自分に安住せず、自分というものを無にして、人から受信し、吸収しようとする生き方」と述べられているが、城山氏自身がそのような生き方を体現していたからこそ、素晴らしい人々との出逢いに恵まれ、人々の心に深く残る作品を書き続けることができたのだと思う。
この本に挙げられた人々それぞれについて、より知りたくなるとともに、政治不在の状態が続く今、ぜひ最後の章の浜口元首相のエピソードだけでも、政治家の方々に読んで頂きたいと思った。
今だから必要な一冊
★★★★☆
現代のような混沌混迷の続く世の中だからこそ、本書の内容は体に染み入るように伝わってきます。今はモノ・金に溢れて反骨心がなくなっているように思う。だからこそ本書のようにしっかりした信念で生きていた偉人達に学びたいです。
城山文学のエッセンス
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逆境におかれた先人たちを振り返った城山三郎の講演録。城山文学のエッセンスがまとめられています。城山文学の入門書として最適です。