自殺喫茶
価格: ¥0
「あ、そうだわ! 良い事を思いついた。ねぇ、康彦さん? 私とゲームをしない? 素敵な賞品もつけるわよ?」
音が聞こえてきそうな見事なウインクを添えて、松永は突拍子もない提案をした。何時の間にやら場の空気は松永が支配し始めていた。まったく、こんな時でも俺の質問は無視かよ。
「ゲーム、ですか?」
「そう、殺人ゲーム。賞品は私の命」
松永は冗談みたいな言葉を、何処か楽しげに、けれどふざけた様子なく告げる。殺人ゲーム。聞いた事はないが、その名前から想像するに命のやり取りなのは確かだろう。
この春から喫茶アンレーヴでアルバイトを初めた横山ユタカ。しかし、店主の松永架音は依頼人の命と引き換えにその人の最後の願いを叶える自殺屋アプレザンレーヴだった。松永を止めようとするユタカだったが、彼にも人に言えない秘密があり、物語は予期せぬ方向へと進んでいく。
【既刊紹介】
『落語り帳シリーズ』
「ねぇねぇ、あっちゃん。ちょっと面白い話があるんだけど」
「面白い話? 落語なら勘弁だよ?」
亜美は知っていた。楓が面白い話があるというと、ほぼ一〇〇%落語の話だった。
『外道院シリーズ』
「次女の上泉紗恵よ……えーと……か、勘違いしないでよね! 別にあんたが入ったからって特別嬉しくはないんだから!……とか言ってみたり」
続いて紗恵が恥ずかしい風に装って自己紹介をしたが見るからにいつもの演技よりやる気はなく、雰囲気の切り替えが早かった。
やるんならちゃんとやれ。