変態どもの狂宴
★★★★☆
名作である。
マンディアルグという作家による原著の変態性を、鬼才・澁澤龍彦が余すところ無く表している。
帯にある"名翻訳"は伊達では無い。背徳が持つ独特のロマンティシズムが、ありありと感じられる。
もちろん、現在に至るまでに発表された多くのエロ・グロを主題とした小説に比べれば、いささか古臭かったり、派手さは見られないかもしれない。
だが考えてほしい。これは1953年初版なのだと。その時代に、こんな変態小説があったのだ。まさしく人間の想像力は無限であることの証拠と言えるだろう(サド等の古典変態小説に次ぐ、いわば近代変態小説の魁であろう)。
近代古典としての変態小説。これは様々な意味を内胞しているのではないか。
あの時代の、あの作家による、あの訳者だからこそ生まれた狂宴の物語。耽美的とも言える突き抜けた変態性。
変態小説の全てが、ここにある。
余談だが、この本は1982年発刊の原本を基にして印刷されているため、字に古い本独特のかすれが見受けられる。
だが、それは決してマイナスではない。むしろそれが、この本の持つ雰囲気を、ことさらに演出すらしている。
全ての変態たちに、祝福を。
僕、目がセピア色に変わったんですよ
★★★☆☆
おどろおどろしさとド助平さに惹かれて必死(!!)に熱読した後、一気に萎えてしまった。「人志松本のすべらない話其之伍」というDVDの中で語られていたブラマヨの吉田さんの話-彼が20歳の時に60歳の女性とHした後の感想「僕、目がセピア色に変わったんですよ。何してんねんやろ、俺は」という言葉が妙に頭に浮かんだ。そんな気分だ。そんな自分はノーマルorつまらない人間なのだろうか。 それにしても魅力のある文章だ。こんなバカバカしい作品が何度も発売され、上製本で売られるってことは、きっと皆大事に閉まっておいて、時々手にしてはニンマリしてきたのだろうなぁ‾
自分もその仲間になりそう…
エロスの黒い神に出会ってください。
★★★☆☆
本書は訳者である澁澤龍彦をして『エロティシズム文学の奇書、あるいは文学的ポルノグラフィー』と言わしめた奇書であって、ポルノという体裁ながら一筋縄ではいかない残酷さを兼ね備えた本なのである。ポルノと残酷さの併用というと一番に思い浮かぶのがサドであるが、このマンディアルグの描く世界はどちらかというとバタイユの描く世界に近いかもしれない。と、ここで気がついたのだがこのサドもバタイユもフランス人であり、いわずとしれた怪物作家である。バタイユの「眼球譚」や「マダム・エドワルダ」などもなかなか突拍子もない作品で、初めて読んだときはかなりぶっ飛んだのだが、この「城の中のイギリス人」はその比ではないのである。ストーリーとしては非常にシンプルで、主人公である『私』がイギリス人でありながらフランス風のモンキュという名を名乗る紳士の城に招かれるところから幕を開ける。その城ではモンキュ自身が性的興奮を得るために数かぎりない性的実験を行っており、『私』は恐ろしくも蠱惑的な世界に取り込まれていくことになる。
作者自身が出来るだけ残酷で破廉恥でエロティックな物語を書きたかったというとおり、本書にはあらゆる行為が描かれる。へたをするとこれは友成純一が書いてるんじゃないかと思ってしまうほどだ。その行為については詳細は書けない。ここで書くことはできない。だって、そんなことしたら人格を疑われるもの^^。とにかく、もしこの本に興味をもたれて読んでみようなどと大それたことを思った方は、心して読んでいただきたい。でも、これだけは忠告しておこう。ご飯が食べれなくなっても責任は持てませんからね。それでも読もうと思われた方、あなたはエロスの黒い神に出会うことでしょう。