インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

狼の太陽―マンディアルグ短編集 (白水Uブックス)

価格: ¥914
カテゴリ: 新書
ブランド: 白水社
Amazon.co.jpで確認
奥が深い〈魔術的写実〉の世界 ★★★★☆
 作者ならではのイリュージョナルな世界が展開される6短篇。最初の「考古学者」は高踏的でかなり難解な作品だ。デコラティブな曲折した文章が続き、迷路をたどるようでいささか疲れる。続く「小さな戦士」「赤いパン」「女子学生」は、まあ平均点といったところか。メインディッシュは最後の2編! 男が下等動物に奇怪な磔刑を執行される「断崖のオペラ」と、森の館を訪れた少女の恐怖体験を描いた「生首」だ。いずれもホラー色に彩られ、ピリ辛の刺激的フレーバーを堪能できる。

 訳者の生田氏は、シュールの末裔のように言われているマンディアルグの作品スタイルを〈魔術的写実主義〉と規定する。彼のマジカルな複眼を通して眺めると、身辺のオブジェは、ありふれた花も、動物も、鉱物も、建物も、家具も全てが魔術的な機能を帯び、「未知」や「未見」の様相を呈してくるというのだ。そして、彼の作品は〈読む〉よりむしろ〈見る〉性格のもので、文字で書かれた「絵画」と受け取るほうが正確であると説く。

 なるほど作品のディテールに眼をやると、情景描写にしろ、人体描写にしろ、ねちねちと偏執的な細密描写がされた箇所は未知、未見の幻想絵画の世界。それはまるで万華鏡をのぞき見るように、様々な幾何学模様や絵模様がミステリアスな光彩を放ち迫ってくる感覚だ。幻視者マンディアルグの世界は奥が深い。



『小さな戦士』に捧ぐ 私の“クロリンダ”は手元にいます ★★★★★
 私が学生時代、第2外国語だった仏語のテキストがマンディアルグの短編小説でした。今考えればもの凄いことをする教官ですが、これが決定的な出会いになりました。その文章が名文であることが日本人である私にさえひしひしと伝わりましたよ。ストーリー自体はそんなに凝ったものではなくむしろシンプルですが、何とも言えぬ詩的文体と濃密で幻想的な描写が当代最上質の文学の薫りを漂わせて感性に訴えてくるのです。
 その中でも特に『小さな戦士』の耽美に徹した作品世界は私を圧倒しました。複写用紙にして7,8枚くらいの中にヒッチコックの『めまい』に匹敵する喪失と愛執の在りかが込められているのです。「あらゆる男性が漠然と夢に描き渇望しているもの」(p81)、それが失われてしまった以上、男性という生き物は「きみ」の様に死に向かってラム酒をあおるしかないのかも知れません。論理化できない深い感銘を受けたものでした。それから十数年、その頃の講義ノートもテキストも失われましたが、こんな凄い小説を原語で読んだ、という感銘だけは決して失われませんでした。まるで女騎士の影に憑かれて酔いつぶれる「きみ」の様に「再び作品を手にしたい」との思いが募ります。数年前偶然にも図書館で再会。自棄に陥らず這いつくばってでも生きていれば“クロリンダ”にもう一度会うことは出来ます。私はそうでした。
 一作品の思いにのみ特化したレビューになりましたが、それ以外の作品も至高の傑作です。E.A.ポオの傑作短編群に比肩すべき高みを持っています。ただし女性にはお勧めできないかも。訳者の生田さんも述べている通り、著者にはサディズムの傾向があって女性嫌悪・少女陵辱の気配が作風の底流を成しているからです。ただしそういう秘めた「暗い情欲」を芸術として昇華せしめたものが「文学」の名に値しましょう。だとすれば間違いなく彼の初期短編集は20世紀仏文学の一頂点です。
謎めいた美しさ。 ★★★★★
 東はわが国の誇る泉鏡花、西はフランスのマンディアルグ、作品世界の映像的な美しさに私はそう思っている。『オートバイ』も良かったがこの短編集で私のイチ押しは『生首』正直恐かった。おなじ恐さでは鏡花の『ほおずき』と双璧。(だと思う。)訳の分からなさがこれだけ恐怖を呼ぶとは。でも一貫して美しい。幻想的な作品世界に影響を与えたであろうご妻女ボナ(当然美女)もこれまた不思議な作品を描いている。作品集が無いのが悲しい。(4年前に亡くなっている。)
幸いこの本はまだ手に入る。
勿論星は5つ。
狼の太陽 ★★★★☆
が何なのか、この本で初めて知りました。ヨーロッパでは割と普通の言い回しみたいですね。
この短編集は著者がまだ普通の文学を追求していた頃(後期、どんどん独自路線を走っていくので・・・)の最高傑作だと思います。
どの作品もいいですが、特に『生首』の軽やかで不気味なユーモアが出色です。その他の作品も実験精神に富み、非常に面白く読めます。

生田耕作先生の訳も、もちろん悪いわけが無い。☆4つです。