昭和初期の作家である海野十三の作品。作者は逓信省電気試験所に勤務の傍ら、科学小説を書き続け、後に日本SFの父とも呼ばれる。初出は「少年倶楽部」別冊付録［1936（昭和11）年］。後に「空襲警報」［博文館、1941（昭和16）年］に収録。旗男少年は直江津の義兄の家で夏休み中。義兄は陸軍中尉で二十四時間の休暇を貰って帰宅していた。強大な戦力を持つS国と中国大陸で小競り合いをしていた日本だったが、本土では穏やかな日々が続いていた。ある日、旗男達が西瓜を井戸から引き上げて食べようとしていると、怪しい男が井戸に近づくのが見える。男は何か井戸へ投げ入れた…この事件は大空襲の序曲に過ぎなかった。