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だいにっほん、ろんちくおげれつ記

価格: ¥1,680
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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ひとりでおんたこと戦う笙野頼子に愛を叫ぶ! ★★★★★
 「だいにっほん、おんたこめいわく史」の続編。2060年、火星人落語家の娘にして、埴輪木綿助の妹、埴輪いぶきはおんたこに殺害され、死者となってなお、百歳を越えた笙野頼子の評論を朗読し、おんたこ(国家)に弾圧される火星人の歴史を語り継ぐ……って、ものすごく壮大な展開だけど、おんたこに対する怒りを「語り継ぐ」ことが、ひとりで闘い続ける笙野氏のあり方なのだと思う。
 なぜなら、おんたこたちは全てを「なかったこと」にしてしまうから。「読者はどこにいる、読者などいない、なぜなら読むことは近代に於いてリテラシーが浮上させた悪習にすぎないから」と言って文学を弾圧し、「幼女などはない」と言ってロリコン社会をつくりあげ、結婚は共同体ではなく、男女賃金価格差の結果となっており、主婦にならざるをえなかった女性たちが料理し、便所掃除をしても「便所などない、あるのはただ婆の顔だけだ」と言って成人女性を苛めるおんたこたち。世の中はコネがある「正社員」に仕切られ、「筋道立った思考が出来る人間や社会に対する企業の義務意識を持った社員程、組織から脱落」し、「過労死」する……
 おんたこは論畜であって、右畜(贋の保守派論客あるいは贋江藤)も左畜(贋の左派論客あるいは贋吉本)もいっしょくた、つまり最大多数派でありながら反権力を装う人々で、「主語も動作も行為の意味も曖昧」にし、責任を取らない人たちだ。
 おんたことの闘いも、時が経てば忘れられてしまい、笙野氏の論争史を知らない若手評論家がどんどん文芸誌にも出てきて、見当違いな発言を繰り返す……そして、今までの経緯を押さえろよ、というファンの素朴な怒りすら「読者などいない」と言ってなかったことにされてしまう……。これ、たったひとりの闘いでありながら、実は日本文壇史に対する大きな問いかけだと思う。若い頃、好きだった作家の何人かが、おんたこ側に去った現在、切実にそう思います。