「恵まれた」入院患者と極限状況にある漂流者の対比
★★★★☆
精神科医の望月副院長は、主人公というよりは語り手といった位置づけです。自身の浮気話は、余計かもしれません。
ハンチントン舞踏病という具体的な病名が出てきた時点で、私個人としてはやや興味は削がれたような気がしました。あるいは架空の遺伝性疾患を設定してもよかったような気もします。
精神疾患が執筆に当たって取材された大きなトピックと思われます。限界状況に置かれた漂流者の精神状態にも通ずるものがあります。
終盤にどんでん返しが1つ入りますが、ややインパクトは弱いようです。前向きなほのぼのとした感じで終わります。著者は無名時代に育児を担っていましたが、その片鱗をうかがわせる部分もあります。
総じて、「あの『リング』の作者なのだから」という過大な期待を持ちさえしなければ、けっこう楽しめるサスペンス小説だと思います。
人の心の脆さと強さ
★★★★☆
「リング」「らせん」などを書いた鈴木光司さんの作品です。
意識不明で浜辺に倒れていた女性は、目覚めても言葉も喋れず、記憶喪失に陥っていた。しかも、妊娠4ヶ月。
その頃、彼女の元恋人真木洋一は、あることをきっかけに常軌を逸した行動をとるようになった恋人から逃れるように、遠洋マグロ漁船へと乗っていた。
彼女の異常な行動の原因は、彼女の過去に隠されている。精神科医の望月は、その過去の謎を解き明かそうとするが・・・・・。
「リング」「らせん」みたいな、オカルトチックなホラーではなく、もっと現実的なテーマになっているだけに切実で、違った怖さがあるかも。でも終わり方は、題名の通り、光の射し込む海のようなゆったりと明るい気持ちにさせてくれます。
本を選ぶとき、私の中で、なんとなく海に関わるものというのがあります。海についての描写を読んでいると、海の中にいる時のゆったりとリラックスした気持ちを思い出すからでしょうか。この本に出てくる海は、荒れ狂う厳しい海ですが、根底にはどこか、深い静けさがあるように感じます。
宿命を受け入れられるか
★★★★★
もし愛する人に、絶対的な負の宿命が訪れた時、自分はそれに応えられるのか?
愛するが故に、その苦しみは想像を絶するだろうと思う
こんな事を考えさせられた一冊
考えすぎて煮詰まっちゃったような話
★☆☆☆☆
これを初めて読んだのは高校生の時。
当時「リング」「らせん」「ループ」の
三部作を通じて描かれた世界観に感動して、
氏の作品を読み漁っていました。
しかし、この作品は期待はずれで、
読んでる間がとっても退屈でつまらなかったです。
しかも、同作を途中まで読んでやめてしまった友人に
あらすじを教えているうち
まるでコントのネタ話のように思えてきて、
夕陽が差し込む放課後の教室で
ゲラゲラ笑ってしまう有様でした。
あれから数年経った今になって思えば、
どうしてもこの状況下の恐怖が描きたくて
構想を練りに練って考えすぎた挙げ句、
煮詰まってしまったような印象を受けます。
この話でバカ笑いする私も私ですけどね(苦笑)
少し展開が強引な気が・・・
★★★★☆
登場人物の心理描写はすばらしいと思います。
1人の女性の行動を紐解いて行く展開はとても惹きこまれるものがありました。
おもしろい小説であるのは否定しません。
ただ展開が強引すぎないかなって思います。
また、序盤活躍してた登場人物が途中から消えてしまうのは悲しかったです。