従来の入門書が知覚、学習、要求、個人差、発達、社会などの章で構成され、通読したときに心理学全体の姿が見通しにくい傾向にあったという反省に立ち、心理学全体を見渡せられる「こころのありか」という部章を冒頭に設けているのが大きな特徴だ。ここでは、現代のこころの科学としての心理学がどのような道をたどって成立したのか、心理学とはどのような問題を扱う学問なのかを記述している。続いて、「こころのはたらき」では、各論として従来の章立てを継承し解説しているが、できるかぎり相互に関連しあうような記述に努めたという。最後の「こころの探求」では心理学の歴史を記述している。
頭から通読する必要はなく、興味のある項目を拾い読みしてもいい。さまざまな心理学の本の理解を深めていく上でも大いに役立つ。信頼のおける心理学の道案内書として手元に置いておきたい。(清水英孝)