電子出版ナビゲーター
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電子出版が身近なものになり、個人やグループなどが電子書籍を出版するケースが増えてきています。また、出版に関する情報なども、あちこちで見受けられるようになりました。
本書は、電子出版を考えている人・これから始めようとしている人が知っておくべき情報をまとめたものです。作家として自著の経験、電子書籍制作業務・電子出版業界団体との仕事を通じて得られたものなどをまとめています。
電子出版はまだ過渡期ですので、なかなか情報が集約されていません。ネットには情報はあるものの、体系的に分かるようにはなっていません。この状況は、電子出版に関わるものとして好いとは思っていません。本を出したい人に、本の内容を考えたり書くこと以外のことで、時間や労力を使って欲しくない。こうした想いから、読めば企画や書き方・出版や出版後のプロモーションまでが分かるものを提供しよう。その分、書く内容を充実させてもらえれば電子出版全体にとってもいいだろうということで書かせていただきました。
本書があなたのお役に少しでも立てれば幸いです。
■電子出版・電子書籍とは
Amazon Kindleの日本語版が発売され、Google Play ブックス・iBookstoreもサービスがスタートしました。また、一万円を切る電子書籍端末も各社から発売され、電子出版市場が広がりを見せ始めています。
電子書籍は、デジタルデータの書籍のことで、コミックや雑誌は含まれません。これらを含んだ、より大きな概念が電子出版です。
デジタルデータですから、ネットに繋がる環境さえあれば、夜中でも購入できます。わざわざ書店に出かける必要もありません。寝付けないから、本でも読もうと思ったときに、新しい本が購入できます。データですので、書店に在庫がない、絶版になるということもありません。
電子版にすることで、文字の拡大や音声読み上げが可能になります。視覚障害者や高齢者で文字が読みにくくなった方にも読んでいただくことができます。
・なぜ電子出版がいいのか
この10年間で書店の数は約3割減りました。1日に1件の書店がなくなっている状況です。
この状況は、インターネットの普及にともなって減ってきています。出版市場の縮小も同じ傾向にあります。以前は情報を得る手段というと、テレビやラジオの放送メディアを除けば、新聞や雑誌・書籍といった紙のメディアでした。しかし、同様のものが今ではインターネットにあります。テキストを読まなくなったのではなく、これまで以上に読んでいます。ただその対象が、ネット上のニュースやブログ・ソーシャルメディアなどに変わっただけです。
書店にも壁というものがあります。どうしてもスペースが限られているため、市場に流通している約100万冊の本を全て置くことはできません。また、売り上げを上げるために、より売れる本・売り上げた実績のある著者の本しか置けません。
出版社の壁としては、どんな本が売れるのか分からないので、タイトル数だけ増えて発行部数は減っています。初版が1,000部という場合もあります。これでは、書店に一冊ずつ配本しても、すべての書店に置くことはできません。また、売れる本を出したいので、無名の著者や販売数が見込めない本は出せません。
読者にとっての壁は、書店で買いにくい本があることや、買いに行くのが面倒だったり、住宅事情で本を置くスペースがないことなどです。日本は、住宅が狭いため本棚の問題はついて回ります。ハードカバーの本などは、重いので荷物が多い日は、持つのをあきらめてしまいます。地方都市など、駅前に書店がない・車で買いに行かないとならない地域もあります。
電子書籍であればこれらの問題を解決できます。また、ネット上のメディアとは違った利点もあります。
ブログやメールマガジンなどは、最後まできちんと読んでもらうというのが難しいメディアです。ネットだからというわけではありません。フリーペーパーを最後までしっかり読むでしょうか。気になるところを読んで捨ててしまうという方もいます。これは、無料だからであって、わずかな金額でも有料ならしっかりと読んでくれます。つまり、無料ではその内容を届けたい人に届かなくなりがちです。
ネット上のメディアは、最後まできちんと読まれずに反応されてしまうことがあります。しっかり読めば、分かってもらえることも、途中に何か引っかかることがあると、そこで反応されてしまいます。対応がよくなければ、炎上してしまうこともあります。
しっかりと読んで考えてもらいたい。複雑なこと・込み入ったことを伝えたいときは、電子でも書籍というパッケージを与えて有料にした方が伝わります。
紙の本で自費出版をするのは、約200数十万円掛かりコスト面で大きなハードルがありました。電子書籍は 1/10~1/20以下のコストで可能です。自分で電子書籍データを製作できれば、ほぼお金をかけないで出版することも可能です。個人での出版が可能なプラットフォームも増えているので、きちんと内容を伝えたい。書籍を販売して印税を得たいという人にとっては、いい環境ができつつあります。
出版社に持ち込みをして、50社全てに断られたアマンダ・ホッキング(米国ミネソタ州在住28歳の作家)は、電子書籍で出版をすることにしました。このシリーズが人気となり、ストアのランキング上位になると出版社から声がかかりました。
J・K・ローリングのハリーポッターシリーズの一作目『ハリー・ポッターと賢者の石』は、12の出版社から断わられて13社目でやっと契約することができました。
この例だけではなく、私の「ポメラの本」も出版社に断られています。私だけではなく、ポメラ関連の書籍を出そうとしていた人を何人か知っていますが、いずれも実現していません。電子書籍で出版してみたところ、コンスタントに売れ続けています。
出版社は、見る目がないのかというとそういうことはありません。どんなベテランの編集者でも、なにがヒットするかは分かりません。コストをかけずに出せる電子出版からはじめて、反応を見るという方法もあります。
目次
■はじめに
■電子出版・電子書籍とは
・なぜ電子出版がいいのか
・電子書籍向きのテーマとは
■サスティナビリティ(持続可能性)
■読みやすい電子書籍とは
■編集・校正・校閲の重要性
■著作権・肖像権の許諾と注意点
■販売するのか無料配布するのか
・配布方法
・有料販売のストア選び
■値付けと印税
・価格戦略
・印税率
・印税の受け取りと銀行
・Amazonとkoboで販売する際の注意点
・Amazonで印税を受け取る準備
・SS-4をFAXする
・W-8BENの記入とエアメール
・kobo向けに販売する方法
■出版代行サービスの課題
■電子書籍データの作り方
■配信の準備 ストア登録
■配信の準備 書誌情報など
■書籍の登録手順(Amazon)
■審査および配信後の注意点
■プロモーション
・本との出会い方
・Webサイトやブログ
・Facebook・TwitterなどのSNS
・検索によるプロモーション
・読書記録サービスの利用
・悪い意見を見てしまったときは
・導線最適化
■POD(プリントオンデマンド)
■あとがき
■奥付