起承転の小説
★☆☆☆☆
短編集なので、作品毎に評価はさまざまだが、『情夜』、『適当なアルバイト』、『黒い森』、『同じ棲』は、起承転結ではなく起承転で完結する。しかも、その後を想像すらできない形で!とても浅田次郎先生が書いた作品とは思えない。
けっしてあざといわけではない
★★★★☆
浅田氏の小説集には月にまつわる話が多いですね。先日は『月島慕情』を読みましたし、ずいぶん前に読んだ『月のしずく』は私の最も好きな浅田作品です。泣かせあり、不思議な余韻を残す物語あり、十分に楽しませていただきました。浅田作品をして「あざとい」と非難する向きがあるようですが、そのような評価があるのは「小説の大衆食堂」を自認する浅田氏の巧さの裏返しではないでしょうか。
「余韻」が深すぎる
★★☆☆☆
以前に比べて、「その先はご想像にお任せします」といった短編が多くなったような気がします。それが帯に書かれた「深い余韻と感動」ということなのでしょうか。
以前のように「うまい!」と感じたのは11編の中で「忘れじ・・」のみで、他に2編で結末を「余韻」として受け止めることができました。
また著者による「補遺」あるいは「国境」に対するこだわりは、文学に対する著者の思いがよく示されていて、説得力がありました。
心象風景と怪談
★★★★★
ストーリーテラーとしての浅田次郎は、
作家としての頂点に到達し、
Sキングがそうだったように、
自己の内面を探りつつ、創作にぶつけている観がある。
浅田次郎がすごいのは決してエンターテイメントから離れていないところだ。
本作、
どれ一つとっても、
生き方を考えさせ、
同時に怖いような懐かしいような、
すでに自分さえ忘れてしまった古い自分に向かい合う短編ばかりが並ぶ。
タイトル作の清々しさと切なさ、そして最後の数行で読者を日常に回帰させるテクニックは素晴らしい。
「冬の旅」は浅田作品の原石のような構造をもっていて、興味深かった。
お勧めです。
うーん、どうなんでしょう
★★★☆☆
浅田次郎という稀代のストーリーテラーが好きで、40作以上読んできました。ケレン味たっぷりの構成と展開がつぼにはまり、ずっと読み続け、これは久々の短編集なので期待して読んだのですが・・・・・。
浅田次郎という才能と技術を持った作家だからこそ、より高みへといざなってくれることを期待したのですが、期待が高すぎたようです。
幽霊譚のようであり、どこかファンタジーのような色合いもあり、過去の名作の登場人物のような設定にも興味を覚えたのですが、読者を小説の中に、おいてけぼりにするようなエンディングが続くと読後に空虚感を覚えてしまいます。
短編小説ですし、ネタばれにならないように書きますが、その結末はないでしょう、と言いたくもなります。
あえて結末を書かないという手法も理解していますが、その後の展開の始末が書けないのでは、と思ってしまわせては駄目ですね。
大好きな作家ですし、これからも読み続けようと思っているだけに余計に評価が厳しくなったのかも知れません。
多作な作家故、仕方がないのかもしれませんが、1990年代の輝きに満ちた作品群と再会したいと切に願っています。大好きな浅田次郎と再会したいがために・・・・。