清水穣氏の数ページの短い評論は読むに値する
★★★★☆
写真家中平氏については記憶喪失や伝説めいたところを中心に何度も語られるところが多かったが、かの2003年の横浜美術館「中平卓馬展 原点復帰―横浜」の写真について(批評家の怠慢か)誰も長い間評論しきれていなかったものを評論家の清水穣氏がやっとひとつの写真を読むためのツール(マイケル・フリードの提唱したアブソープションとシアトリカルより)を提示していることでこの本を手に取る価値あるものにしている。また過去の中平氏については寺山修司、赤瀬川原平など彼を近くにいて見ていた人の話が写真については何も説明にはならないが、半ば伝説にされかかっている今より以前の氏の姿を伝えていて興味深かった。
そのほか、大部分は過去に他の雑誌などに掲載されたものを集めたもので図版もそう多くはないので初めて中平氏に興味をもった方でこの本から読んでもよくわからないとは思います。これから色々見てみたいという方は過去の写真集を図書館で古いものから順番に見ていって尚も興味が持続するなら「なぜ、植物図鑑か」を読んでから「中平卓馬展 原点復帰―横浜」の写真集を見てみてください。
いずれにしても中平氏はまだまだ現役。今日も写真を撮っていることでしょう。