軽薄な写真コラムではない
★★★★☆
この書物は中平卓馬による写真・映像論集であって、写真雑誌に掲載される類の軽薄な写真コラムではない。これまで発表されてきた中平のエッセイをまとめたもので、彼の思想を理解する上で重要な資料になることは間違いないが、「森山大道さんはどういうカメラをつかってるんですか?」的な好奇心は簡単に打ち砕かれてしまう、難解な書物である。
読むにつけ、中平が自身の映像イデオロギーを“断定的に”抱きながらも、しかし実際の表現としてそれを達成できなかった70年代、そして彼と歩みをともにした同人たちをも間接的に否定せざるを得なかった葛藤が読み取れる。それが彼の病、そして再生の後の逆説的な展開を理解する一つの筋道なのかもしれない。
原点復帰-横浜
こちらと併せて読まれることをおすすめしたい。