ブランドや人材、技術などの知的財産、つまり「見えない資産」が企業価値を決める時代といわれ、その評価法が脚光を浴びているが、著者によると、経営実践の場では、すでに1970年代から行われていて、国際的M&A業務のなかでは「見えない資産」の分析・評価を伴った企業評価は日常茶飯事だという。
本書ではこの「見えない資産」の評価実務を扱っている。国際合弁企業の株式持分の買収の実務体験を紹介しながら、「見えない資産」の増大策について述べられている。具体的には、会社の価値の定義にはじまり、見えない知の資産の内容、実際に行われた買収の例とキャッシュフロー経営の実体、デュー・デリジェンス、アフターM&Aが11回の講義形式で説明されている。
本書は会計士や弁護士などの専門家ではなく、企業の実務経験者が書いた、実践の書である。企業買収の方法のみならず、企業の意思決定をも取り上げた内容は、まさに「生きた会計書」と呼ぶにふさわしい。(木村昭二)