ドイツ思想と日本の近代 (常葉叢書)
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人と人との出会いが様々なように、国家と国家の出会いもまた様々です。
1861年より前の日本とドイツとの関係は、オランダ・ロシア・フランス・イギリス・アメリカと比較して、
ごく小さなものでした。
国と国との関係としてドイツ(プロイセン王国)が日本の歴史に登場するのは
今から150年前の1861年が最初で、それ以前に交流はまったくなかったようです。
とはいえ、ドイツ人と日本人との関係は、じつは深かったのです。
鎖国時代に国家同士の関係を有していたのはヨーロッパではオランダだけでしたが、
オランダが派遣していた商館員の中にケンペル(1651~1716)とシーボルト(1796~1866)という二人のドイツ人医師が含まれていて、
彼らドイツ人たちが鎖国時代の日本の情報をヨーロッパ諸国に伝える役割を果たしていたからです。
ただし、その後、1861年に日本ドイツ連邦間に正式な国交が開かれるまで、
ドイツ思想への言及はないようです。 本書は、1861年の日本とドイツの出会いから今日にいたるまでの、
ドイツ思想の日本への影響を概説するものです。
本書は、2011年10月から2012年3月にかけて開催されたドイツ・マンハイム美術館の
日独修好150周年記念日本展のカタログに掲載された解説文です。
この日本語による文章は同美術館研究員の宮田奈々氏によってドイツ語訳され、
"Ferne Gefahrten-150 Jahre deutsch-japanische Beziehungen"に'Die deutsche Philosophie und das moderne Japan'
という題名で収録されています。
なお、読むにあたっては、次の二点にご注意ください。
(1)翻訳の便宜を考えて、ドイツ語にしやすい文体・構文で書いてあります。
(2)日本の歴史用語はドイツ人には理解しにくいと思われるので、思い切って意訳してあります。
目次
1.1861年以前のドイツと日本
2.明治維新革命(1868)まで-改革の模範としてのドイツ連邦(1815~1871)
3.明治天皇の時代(1868~1912)-模範国としてのドイツ帝国(1871~1918)
4.ドイツ思想受容にあたっての3類型-日本の儒教・仏教・キリスト教との関係
5.受容の3類型に起因する影響の3類型-主にヘーゲルとカントを媒介にして
6.第1次世界大戦とマルクス主義-ドイツ、模範国から左翼思想の供給源となる
7.日本文化の再発見とハイデガー哲学-日本思想と実存主義の出会い
8.日本の戦後とカントの『永久平和論』-ドイツ思想の受容のあり方が1862年に戻る
9.思想を言語や民族で区切ることは可能か?-フランクフルト学派の隆盛とハイデガー哲学の再評価