このセットのディスク1は、クックがキーン・レーベルに遺した1957~1959年の音源をまとめたもの。この時期、かつてゴスペル界の虎だったクックは、スイートでひと癖あるソングライターへと手なずけられ、甘い歌声を聴かせるスタンダードへと傾倒し、独特のヨーデルでどんな曲にも自分の刻印を押すようになった。ディスク2と3は、RCA時代のシングルとアルバム・トラックを扱っている。オーケストレーションの巧妙さもあって、これらのトラックは、ソウルのみならずロックの歴史においても不滅の足跡を残している。(「That's It, I Quit, I'm Movin' On」をエルヴィス・コステロの「Blame It On Cain」と比べてみて頂きたい!)最後のディスクには、クックのスタイルが極まった2枚のアルバムがまるごと収められている。『Night Beat』(閉店時間後が似合うクールなソウル)と「Live at the Harlem Square Club」(大声でオーディエンスをあおりまくるクック)だ。
クックのキャリア中期の概観として、このセット手ごたえ充分といえる。ただし、ソウル・スターラーズと共にゴスペルをシャウトしていた初期、および数々の名曲をレコーディングした晩期が抜け落ちている点は要注意。「Shake」や「A Change Is Gonna Come」といった晩期のヒット曲などは、驚くことに、いまだに入手できない状態にあるのだが。(Douglas Wolk, Amazon.com)