初心者さんへの入門書
★★★☆☆
ギリシァ・北欧・クトゥルー・ケルト・インド・メソポタミア・エジプト神話に登場する神々を取り扱った本です。
たまにマイナーな神様が載っていたりしますが、本書含むこのシリーズはオーソドックスで馴染み深い文化圏を扱っている為、そのほとんどは既知であることが多いです。
当然ながら個々の神様、神話となると専門書に負けてしまいますし、マイナーな文化圏の神様、神話を探すことには向いていません。
ですが、大まかなエピソードや主たる存在は紹介されていますので、初心者の方にはお勧めの一冊です。
買う前の注意点
★★★★☆
『「天使」と「悪魔」がよくわかる本』と読み比べてみると、希に被っている項目があったりします。
恐らく、地域によって「神」として伝来していたり、「天使」や「悪魔」として伝えられている等の差があるからだと思います。
また上記の通り、発祥が同じなのに、地域によって異なる伝わり方をしている神様がいます。
そのような場合、地域によって神話やその性質がかなり異なっていたりするので、そうした類の神々は説明を省かれていることがあります。
なので、「何でこの神様はこんな説明が少ないんだろう?」と思うような項目は、説明するほどの資料がなかったか、或いは地域によって中身が変わりすぎているので、宗教的なことを考慮して書くことが出来なかったか、などの理由が考えられると思います。
詳しく説明しているものもあれば、ちょっとしか説明のない項目もあるので、購入する際はその点も考慮しておくと良いかもしれません。
イラストが大ヒットですわ
★★★★☆
子供の頃にイラスト付きの「日本神話」や「ギリシア神話」をワクワク読んでいた感覚を思い出しました。この本、一時期そこらじゅうで面出しになってましたよね。出版社さんにとってもサプライズロングセラーではないでしょうか。売らんかなよりも編集さんの情熱が感じられる本が結局売れるのは見ていてこちらも嬉しい。もしかしたら私の知らないサブカル世界で神様ブームや神話ブームが起きているのかもしれませんが(『エヴァンゲリオン』とか、ゲームとか)、PHP文庫からこういう本が出るのはなんだか愉快です。何故にクトゥルー神話が入っているのかは不思議でしたけれど。編集さんがマニアなのか。
まずイラストが美しい。美男美女の神様たちの絵にウットリします。こんなささやかな文庫本にこんな美麗イラストがたくさん掲載されているのだから手に取って「おお!」となり思わずレジへ。絵の力であれよあれよと各国の神々の初歩的な学習が出来てしまうのですから、美味しい一冊。解説は簡略ですが、各国神話の奇想天外さや不気味さは大したもんだと感心します。人間の想像力やグロテスク趣味、象徴形成能力というのはとてつもない。こういう豊穣さは、神話学やらなんやらで「解体分析」なんかしなくてもよろしい。私は三島由紀夫の「形あるものの表面を剥がしたがる最近の風潮には嫌悪を感じる」という言葉に大変に共感します。
イラストがカラーだったらもっと良かったな〜、というのは望蜀の嘆にしても、しかし繰り返しますが、マヤ、アステカの神が登場せずに創作神話であるクトゥルーが取り上げられるとはナニゴト!?、という他のレビュアーさんの文句には賛成ですね。第二弾を出して頂きたいです…とか言っていたら、本書ヒットの勢いで第二弾、第三弾としっかりシリーズ化されておりました。
どこらへんが世界なわけ?!
★★☆☆☆
なんで「世界の神々」にマヤ、アステカなどの神々が入らず、クトゥルーが入るのか理解できん。
ラヴクラフトと彼を崇拝する集団による文学体形を否定するわけではないし、神々などといっても所詮は人の空想といってしまえばそれまでなんだが。
ギリシャ、北欧、ケルト、インド、メソポタミア、エジプト、ここまではわかるのよ。
なんでこの次がクトゥルーなんでマイナーなもん持ってくるかな。まるで書きやすさだけで選んでいるよう。
文系のちょっとだけ神話を知ってます、文学かぶれです、という人物を集めて文章を書かせましたというレベル。
気になるのが、参考文献からそのまま文書を持ってくると悪いと思ったのか、名詞などの「単語」を類義語に置き換えて書かれている点。
神話だのなんだのを調べると必ず出てくるのだが、訳者が同義語に置き換えてしまったために属性が変わってしまったり、スペルミスから他と混同されたり、という歴史的事実をキチンと認識しているのであれば、こういう初歩的で私的な変換ミスってないと思うが。やるとしたら原点に戻ってこの単語は本当に使おうとしている言葉の意味を持っているのか、など、調べると思うんだがね。参考図書を見る限りではそういうこともなさそうだし。
このシリーズに何度も書いているけれど、アトラスのゲームの方がよほど詳しいし調査が行き届いてます。
広く浅く安く・神話ファンは必携
★★★★★
この本は、世界の諸神話の神々と、代表的な英雄(英雄は通常、神の血を引いている)の図鑑です。ギリシャ、北欧、ケルト、インド、メソポタミア、エジプト、そしてアメリカ人による創作神話であるクトゥルー(クトゥルフ)神話から収録されています。なお、日本神話の神々の図鑑は別冊で出ていますし、唯一神は図鑑に載せるものではありません。
各神話につき、特に有名な3柱ほどが丸々1ページのイラストと3ページにわたる解説で、かなり有名な5柱ほどが半ページのイラストと1ページ半の解説で、それほど有名ではないが決してマイナーではない7柱ほどが1ページの解説で、紹介されています。コラムでは、神々の武器、美しい女神、南北アメリカ大陸先住民の神話など、興味深い話題が触れられています。
収録されている神々の1人1人の情報量はさほど多くなく、神話についてちょっと年季のある方ならば、むしろ知っている情報の方が知らない情報よりも多いかもしれません。当然ながらイラストは白黒です。しかし、それでも情報量は、文庫本であることを考えると信じられないぐらい多く、お買い得感があります。イラストも、カッコよく書かれていて現代人の感覚にも抵抗なく受け入れられます。
ただ、私個人としては、創作神話であるクトゥルー神話を収録するぐらいなら、実際に人々に信仰されている中国やゾロアスター教(現在、信仰の中心はイランではなくインド)の神々を載せてほしいと思いました。また、北欧神話の固有名詞のカナ表記が英語の発音だったり古アイスランド語(エッダが書かれた言語)の発音だったりして、統一感がありません。また、収録されている神々の選別は、あくまで「最終的に固定された体制」に基づいています。よって、相当に有名でも、ギリシャ神話では物語から姿を消したガイアやクロノスは載っていませんし、インド神話では現在の創造・維持・破壊の3柱に主導権が移る前に主神クラスであったヴァーユやヴァルナが載っていません。まあ、これらを差し引きしても、星5つ分ぐらいのクオリティーはあるでしょう。