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我、食に本気なり

価格: ¥1,680
カテゴリ: 単行本
ブランド: 小学館
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アーメン、ソーメン、ヒヤソーメン ★★★★★
昭和23年生まれで中央線の高円寺で育った著者が、その舌を巻くほどの記憶力によって、克明に再現された36の「食」にまつわるエッセイ。「誰よりも君を愛す」(アイスクリーム)といったコミカルなサブタイトルとともに記された品書きを見ていくと、これが庶民的な食べ物ばかり。さつま揚げ、ラーメン、すき焼き、うどん、柿の種、カレーライス、卵、油揚げ…。

だけど、いざそれらを食べる時、味や香りと一緒に、高円寺商店街の乾物屋だった昭和30年代のねじめ一家やご近所さんや友人知人が次々と登場してくる。食べ物と場面が一体化しているのだ。なかでもつまらないことをきっかけに著者とやりあってばかりいる関西出身のオクサンがケッサクだ。

ねじめ正一が書くものは、会話も含めて場面描写にすこぶる臨場感があるうえに、文章自体にも滋味があり、自分にも思い当たる節がある「味噌汁かけごはん」には大笑いし、シュークリームに対する並々ならぬ執着心にはふむふむと感心しながら、実に楽しく読める。「牛乳VS脱脂粉乳」の様相を呈する「牛乳」と、時代と場所を越えた決まり文句「アーメン、ソーメン、ヒヤソーメン」が出てくる「そうめん」の章が、とくに楽しく読めた。

庶民の観察眼で、愛すべき人間たちの食べ物に関する愉快なエピソードを集め、コトコト煮込んでダシがよく利いたおでんの具のように味わえる一冊。