公平でない
★★☆☆☆
私は現役大学教員です.確かに「今まで声を上げられなかった」セクハラ被害者の側に立つのはある程度必要でしょし,大学がセクハラの温床であることも事実です.ただし,著者が一貫して主張している「相手がセクハラといった段階でセクハラ成立=セクハラかどうか決めるのは被害者側でしかない」という主張は,いかがなものかとおもいます.話が変わりますが,「電車内痴漢」も大きな問題で,いままで大きな声を上げられなかったという良く似た事情があります.しかし,最近,冤罪問題がいろいろと出てきています.あれも,「痴漢をされたと被害者が主張したら痴漢成立」という捜査法ゆえの問題かと思います.私の大学でも,まったく何もしてない教員が,ほとんど性格異常の女性に「セクハラ」と決めつけられて噂をばらまかれたことがありました.著者が言うような,「その背景の反省点」など何もありません.弱者をかばうがゆえに,筆が滑ったのでしょうが,「被害者が「不快」と言ったら,それでセクハラ成立」という一貫した論調の本で,非常に不思議な著者だと思いました.
たぶん,著者はアメリカ帰りで,(中途半端な?)アメリカ的思想の影響を受けてらっしゃるのだと思いますが,後半で,セクハラとは関係なく,「教育は契約だから,恩師などという言葉はおかしい.教師に恩を感じる必要はない」ということを強調してらっしゃいます.「師弟」という,良き日本の(日本だけじゃない)伝統,その教育効果が,アメリカで表面的な教育だけ受けた方には理解できないのでしょうね.読者の方が,「セクハラマニュアルとして」この本を読む価値があるとしても,後半の,余計な主義主張の開陳部分は,かなり脆弱な論拠しかなく,うすっぺらです.
卒論の審査を,「指導教員ではなく,外部機関がやるべき」などという,実現もできず,弊害だらけの,思いつきの極論を述べていますが,このあたりも無駄部分です.
総括すれば,「世の中こういう主張が跋扈するようになる」ことを勉強し,教員が自らを諌めるために読むには,非常に良書だと思います.一読をお勧めします.
おすすめ
★★★★★
私も大学教員ですが、この本をとても参考にしました。
この本は、大学教員は全員持つべきものでしょうし、本来なら学生にも1冊ずつ支給しても良いのではないかとさえ思っています。
この本はセクハラにとどまらず、アカハラパワハラなども含んでいます。
でも、本のタイトルからはセクハラに限られているのかという印象を受けるので、それが残念です。キャンパスハラスメントというタイトルだったら、もっと読者が増えるのではないかと思います。
アカハラやパワハラで悩んでいる人にもお勧めです。
非常に具体的でわかりやすい内容
★★★★★
キャンパス・セクシュアル・ハラスメントの説明から対応方法まで、非常に具体的でわかりやすい内容である。大学関係者にはぜひ読んでもらいたい。私も大学関係者であるが「大学の窓口は頼りにできない」という著者の意見は情けないですが現状はその通りだと肯きました。