バイオレンスアクション
★★★★☆
加藤泰が監督、伊右衛門が若山富三郎、お岩が藤代佳子。1961年の東映作品。モノクロですが非常に残虐な四谷怪談で、大変怖いです。迫力では中川信夫や森一生の作品を凌ぐかも知れません。お岩さんのグロテスクさはこれが一番かも。のどに小刀の刃がささって白目をむく場面が強烈です。藤代佳子の顔が不幸顔というか、マゾヒスティックで、じとっとしているんですよね。
ストーリーはわりと原作に忠実ですが、伊右衛門が徹底的にワルという解釈。他の四谷怪談では浪人生活に疲れてだんだんと悪の道に入っていくというパターンが多いのですが、この作品ではもう出てきたときから辻斬りやった後です。わりと白塗りで2枚目の伊右衛門もある中、ヒゲ面でかなりワイルド。仕草も不良っぽいです。
ストーカーの直助にドメスティック・バイオレンスの伊右衛門。登場人物がみんな汗まみれで夏の暑さがよく表現されておりました。ただでさえ暑い中、伊右衛門がキレて暴れまくるので凄まじいです。暴力がリアルで怖いです。切れ方はちょっとコミカルなくらい。お岩さんがしがみつく蚊帳を無理矢理奪ってなまづめが剥がれる場面なんて本当に痛そう。小平の髪の毛むしるところもアイタタタという感じ。宅悦を間男をしろと脅すところなんて、ボディーにパンチいれて高校生の不良みたいで笑えます。
お岩さんが恨み死にする場面は物凄いです。カメラが動きまくって、暴力的。アクションです。下から上へぐわーっと移動して撮影しているところなんかもあります。そうやって動き回って、死ぬ瞬間の顔だけ静止するので、余計に怖い顔が印象に残ります。
伊右衛門がお梅にお岩さんと子供が元気かと聞かれ、ただ「いるよ」という場面も怖いところ。伊右衛門の闇が一言で表現された名場面だと思います。
お岩さんが幽霊となって新婚の伊右衛門の前に現れる場面は、首はふっとぶし、屋敷がポルターガイストみたいに揺れるし、なかなかモダンな演出。中田秀夫が「怪談」でマネていた逆さづり幽霊の場面も出てきて、白塗りの井上真央より数十倍の迫力でした。
最初の方でセリフが説明的なのはちょっと気になりますが、バイオレンスアクションの要素を取り入れた秀作だと思います。