子供時代からリック吉村との防衛戦前の2001年1月までの畑山が、ちょっと軽めの口調でリズミカルに語られる。ワルかった子供時代、野球部の話、ボクシングをやるために16歳で東京へ、柳トレーナーや奥さんとの出会い、趣味…、そしてもちろんボクシングの話。そんな自分の半生を知り合ったばかりの友だちに話しかけるかように、サラっと明るく語ってくれる。「ボクサー」の自伝というよりも、タレント本のような感覚で気楽に読み進められる。
「型破りというか、ひととは違うところを見せたい」せいか、虚像(作られたイメージ)の部分も大切にしている。「タレントがボクシングで世界チャンピオンになったんだ」という言葉に惹かれる人には、雑誌のインタビューをまとめたムックのような雰囲気(制作「Boon」編集部)は好まれるかもしれない。子供のころの写真やヌードまで用意されている。
反面、ボクシング・ファン、ボクサー畑山のファンには物足りない。タレント畑山隆則ではなく、テレビでは見られないボクサー畑山の内面を、当人しか語れない視点で、もっと深く突っ込んで語ってほしい。(志賀 武)