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誰も書かなかった日本医師会 (ちくま文庫)

価格: ¥840
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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   日本医師会に「医療費の増額にしか興味ない圧力団体」というイメージがつきまとうのも無理はない。何しろ、1957年から25年間会長を務めた武見太郎も「会員の3分の1は欲張り村の村長」と著者に漏らしているほどだ。しかし、実際にはより複雑な役割を持つ組織であり、医療行政にさまざまな影響を与え続けてきた。本書は、医療問題の第一線に身を投じ、40年間にわたりその日本医師会を見詰めてきたジャーナリストの集大成である。

   GHQの占領時代にスタートした日本医師会は、吉田茂の姻戚である武見を会長にいただいてから多大な影響力を持ち始めた。以来、会長のワンマン体制が慣例となった。そのため本書では歴代会長の人物論を軸に、その時々の医療問題への反応を見ることで捉え難い組織の内情を描き出している。

   大きな比重を占めるのはやはり武見時代である。医師優遇税制の導入や、制限医療の撤廃、前代未聞の“医師のストライキ”といった個々のアクションだけでなく、医師会が厚生省を牽制し、自民党が調整するという政策決定パターンを確立したのも武見だった。本書では約3分の2を費やして、その光と影をあぶり出している。武見と親交のあった著者ならではの貴重な証言録である。

   小泉首相の医療改革は単なる財政処理であるという卓見も見逃せない。右肩上がりの経済が終わり、少子高齢化が進むこれからの時代、医療問題はとりわけ深刻だ。日本医師会の歴史を通じて医療政策の決定システムを俯瞰できる本書は、今後の医療問題を考えるうえでも必読書である。(齋藤聡海)

医師会の歴史が ★★★★☆
医師会の歴史について、特に25年間医師会会長として活躍した武見太郎氏に多くを割いて描いています。
圧力団体としての医師会のイメージはどうも、この武見氏の業績?によるところが多いようです。
それは、武見氏の政界の有力人物との姻戚関係や、厚生大臣も会うのをいやがったという、押しの強い個性によって、厚生省との確執に打ち勝ってきたというように解説されています。
彼の死後、今では信じられないような医師優遇の政策、医師優遇税制、老人医療、薬価差益は次々に廃止され、小泉改革に代表される医療費抑制政策へと、官僚の思惑通りに進んでいったというように読み取れました。
著者も述べているように、武見自身は医療に対してある種の理念はあるものの、開業医の利益を代表しているという、欲張り村の村長という一面も少なからず持っていたようです。
確かに彼の存在で、開業医が利益をむさぼったという面もあるでしょうが、一方で、国民にとっては、世界でも有数の医療アクセスの良さを享受できているのは彼のおかげという面もあるのではと感じました。
この本自体はやや読みにくいところもあるのですが、医師会についてこれほど深く切り込んだ作品も少ないでしょうから、おすすめできると思います。
医師会 ★★★★★
知っているようで知らない医師会の実像について描こうとした本です。事実上、医師会というよりは、医師会の執行部、特に、歴代の医師会長について、書かれた本です。医療評論家の書いた本です。医師会について書かれた本は、あまり目にする機会がなく、ユニークな企画で貴重な本と言えます。医師会と言えば、何といっても、武見太郎氏で、氏については、特に詳しく書かれています。医療について考える時に、とても参考になる本だと思います。とても興味深い本です。
医師会の真実 ★★★★☆
 武見太郎をはじめとする歴代会長の動態をベースに医師会の内幕を披瀝している。医師会のDNAとは、反官僚、プロフェッショナル・フリーダム、医療費増にあるとする。なかでも、吉田茂の姻戚であり、政界人脈を駆使し、その卓見と強烈な個性で医師会を引っ張った武見太郎の人間像と懊悩は克明に描かれている。医師会員の1/3は勉強もし、プライドも高く、1/3はリーダー次第で変わり、1/3は「欲張り村の村長」という表現は、武見の悩みと多面性を裏付ける。それに加え、歴史の中で、医療優遇税制、制限診療、保険医総辞退、家庭医構想、医療費亡国論など時々の時代を席巻した政策テーマも丁寧に紹介されている。
 時は流れ、生々しい政治力を前面に出せなくなった今、坪井栄孝の敷いた「政策で戦う」医師会は後戻りできない流れだろう。官僚も、与党を交えた三つ巴の手練手管に長けることなく、政策提案を正面から受けとめ、「力勝負」ではない政策決定を目指していくべき。それにしても、医療政策が本当に分かる議員はどこにいるのか、それは見えなかった。医師会と官僚の関係、そして政治の役割、これらが今後の課題だろう。
 医師会とは、最大の利益団体で、腹黒くて、欲張り、という固定観念の源泉と、その変貌の兆しが総覧できる一冊。
評価定まらざる虚人―武見太郎 ★★★☆☆
 本書は、医事評論家なる分野を開拓した水野肇による、日本医師会会長物語と読むことが出来る。
 時代の制約もあるのであろうが、医療を専門とするジャーナリストと成るのではなく、「医事評論家」として「業績」を重ね、政府及び各種の団体の審議会等の委員としてある種内部の密着した立場から、戦後の医療政策の形成過程に係わる経験を持つ著者のみが書き得る日本医師会会長物語である。
 あえてこの著作から水野が興味を注ぐ人物を四人を上げるとすれば、日本医師会会長として君臨し世にその姿を体現した武見太郎であり、時を経て1996年日本医師会会長になる坪井栄考、更に時代のズレはあるが厚生省側の吉村仁と岡光序治だろうか?
 水野の描く日本医師会会員像は、武見が喝破した「欲張り村の村長」と共通し、また前述の武見を除く三人の認識も共通すると思われる。
特に、日医総研を創設し「グランドデザイン」を描き、著書でその政策を世に問うた坪井栄考に対する、日本医師会会員の選択は、「欲張り村の村長」の限界を示すとともにその後の迷走を決定付けたとの疑念を持つ。
 戦後医療制度史、戦後医療保険制度史のサイドヒストリーとして押さえておきたい一冊である。
生々しく伝わる日医の人間群像。 ★★★★★
水野肇氏は、昭和2年に生まれた。著者は山陽新聞を退職し、医事評論家という新しいジャンルを開拓した人である。
この書は、彼が上京し、自己の獲得した位置で知り得たことを肉声で語ってくれる。
水野肇氏だから語ることができる内容。まことに臨場感あふれて生き生きしている。
著者がこんな世界にいたのかという驚き。戦後の日本の医療制度の変遷の重要なポイントに彼がずっといた。
そうだ、彼しか語れない日医の人間群像。日医の会長に焦点をあてて描かれている。
貴重な証言である。
キチンとした年表を巻末につけてくれている。
著者の人間観が逆に浮き彫りにされる。著者にとっても大きな冒険であると共に日本国民への偉大な贈り物である。
ありがとう 水野肇氏。