おそろしいほどの先見の明
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Peter Druckerの本で、二冊を選べと言われたら、そのうちの一冊はこの本にしたいと思います。
時代は1970年代に不連続に変わり、その延長上に今があります。著者がこの本で述べていることは、三十年以上経った今も褪せてはいません。その先見の明の確かさに驚くばかりです。
なお、この本は翻訳が出ていますが、実質的に抄訳です。文章を削ってあったり、段落がところどころ飛ばしてあったりで、元の分量の2/3程度になっています。また、訳してある部分もなぜか時制を誤訳してある箇所が多く、「Aだった」と書いてあるのが、「Aとなる」のように訳してあり、逆の意味に取れてしまうところがあります。今後に新訳が出ない限り、原著を読むほうが良いと思います。
原著は印刷があまり良くありません。活字が磨耗していて、ところによっては、くにゅっと曲がっていたり、潰れかかっていたりします。もちろん、読めないほどではありませんが、内容が素晴らしいのに惜しいと思います。
情報化、グローバル化、民営化──今なお色褪せない論評の数々
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ドラッカーの著作は、経営・組織などのマネジメント分野と、政治・経済などの社会学的なものとに大別されるが、本書はどちらかというと後者に属する。既に1960年代にして経済のグローバル化、コンピュータの発達による情報化社会の到来(まだITという単語も無い)、民営化、教育問題といった、現代社会が今もって抱えている病巣を予見しているのだから恐れ入る。現代に生きる我々が読んでも目新しさはあまり感じないかもしれないが、そんな目新しくない事象の殆どは、実は本書が端緒となっている。本書によって、経営学者としてのみならず社会学者・哲学者としての名声は不動のものとなったと言っても過言ではない。
なお、個人的に職業柄一番気になったのは、「退職金・企業年金は、被用者を雇用主に縛り付ける『金の足枷』である」との論。これもドラッカー発だったのか!?
言葉がありません。
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初版は1969年。今からほぼ40年前です。本書の影響により、イギリスの元首相、「鉄の女」ことサッチャーは、国営事業の民営化を推し進めたらしい。
内容は、とても幅広くかつ濃いので簡潔に述べることは不可能ですが、100年以上続いてきた先進国における政治、経済、社会等々が終わりを向かえつつあり、
新たな世界が生まれつつあると。
例えば政治では、政府への幻滅が最も深刻な断絶であると指摘。政府と公的機関の肥大化を危惧しています。
「政府の実績は不愉快極まりないものだった。政府が成果を上げたのは2つのことだけだった。1つは戦争をすることであり、1つは通貨価値を下落させることだった。」
と、官も含めて痛烈に批判しています。
それにしても、初版が出版された当時も日本でベストセラーとなったそうですが、40年経た今、読んでも納得することばかりです。
バブル崩壊後、日本が本格的に「断絶の時代」に突入し、一層乱気流に揉まれていると感じるからでしょうか。
第V部多元化の時代(組織論)が気に入ってます!
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・今こそ理解できるのが「ドラッカーの論文」である。
・本当に38年も前に執筆された論文とは思われない。今の日本が最大の課題としている少子高齢化問題、年金問題、CSR等々、本書1冊に込められた問題提起には恐れ入る。
・特に筆者は第V部多元化の時代で展開している組織論に興味を持った。「新しい存在としての知的組織(p196)」を視野に入れた新しい時代の組織論が述べられている。
・ドラッカーは組織の社会的責任を基礎に据えて、「社会のニーズを機会として自らの業績に転換することこそ企業にとっての倫理的責任である」と述べている。
・また、「成果が主人公になり、あらゆる意思決定の中心になっている」とも分析している。
・この他にもドラッカーの示唆は的を得たものである。本書は読めば読むほど味が出る名著であることは万人が認めるところであろう。
・30数年前に本書を読まれた方でも、今、本書を読み直されて、ドラッカーの素晴らしさに再度触れられてはいかがでしょうか。
時を越え証明された
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多元社会、知識社会、グローバル経済など本書は現代の重要なテーマを30年以上前に気づいていた人物がいたことの何よりの証拠。特にコンピューターがまだまだ普及していない時代にコンピューターよりそれに伴う情報が重要なのだと言った著者の洞察力がすごい。著者にとってはIT革命は当然の事なのだろう。