職場で関わる者として
★★★☆☆
職場の後輩にとても困った、とても変わった人がいて
毎日悩まされているので、発達障害では?と思い読んでみました。
執筆者の体験と後輩の言動にはかなり重なるところががあり、
予想はぴたりとあたったようです。
障害を持つ人がどれだけ苦労したかはわかるのですが、
接する側の人間にもどれだけ迷惑と苦労を掛けたかは語られておらず、
職場で接した上司、同僚について一方的に「いじめられた」「叱られた」「罵倒された」と悪者扱いで、
今正に苦労させられている人間としては少々納得できませんでした。
筆者らと同じ立場の方にとっては励まされる内容だと思いますが、
周囲の人間の視点からすると、やや被害者意識、自己憐憫に傾いた内容だと思いました。
当事者が伝えたいこと
★★★★★
発達障害に関する本は最近,本当にたくさんあります。そんな中で,当事者の書いた本は,本当に具体的に発達障害をかかえた方々の生きにくさがわかります。特に日本人の書いた本もいくつか出ていますので,ぜひ読んでもらいたいと思います。この本は,複数の当事者の方々が書いておられるので,とてもコンパクトにまとまっているし,複数の人生の物語を学ばせてもらえます。援助職や専門家の方々が日々の実践に生かしていくことはもちろん,自分の苦しみをうまく表現できない当事者の方々が,周りの人たちに伝えていく手段の一つとして,本書の意味は大きいと思います。
様々な思いを抱えて
★★★★★
「私たち、発達障害と生きてます」はその題名の通り発達障害という障害を抱えながら生きていく姿を描いています。
第1章では、診断をされるまでのことを主に書かれています。そこに書かれているのは、大人になってから診断された方々の、生の声です。
「いじめられた」
「なぜ私は人から理解されないのか?」
「心中をおもったことも」
発達障害という障害があることがわからなくて、理解されず、またいろいろなことがうまくいかず、苦しみ、悲しみ、嘆き。中途診断者の思いを代弁してくれています。
しかし彼らは、診断されて、生きていることを肯定できるようになったり、自分にできることはないかと考えたりと、とても前向きに生きようとしています。その姿は読む人に希望を持たらしてくれます。
第2章ではさらに具体的な困難が書かれています。
「いじめられ続け、怒られ続けた」
「仕事を転々とした」
「学校でも仕事でもうまく行けなかった」
生きる上での多くの困難を話してくれています。またそれにより、健康被害が出たり、不利益な努力をしなければ行けない状況をそのまま書いています。できない、でも頑張るという強さと弱さが見られます。
第3章では発達障害を持ってどう生きるかというとが書かれています。7人がそれぞれ工夫されていることや努力していることが書かれています。
「理解者を得ることの大切さ」
「自分らしい生き方」
「心が弱ったときは」
「学習コーチングについて」
それぞれにおもしろくて、ためになる様々な方法が書かれています。とても参考になります。
それぞれの体験談の後高森さんが考察をし、さらに理解が深まるようになっています。
発達障害の方にも、勉強したい人にもお勧めです。
支援者、教育関係者にぜひ読んでほしい良書
★★★★★
三章で構成されるこの本は、7名の発達障害の当事者が歩んできた人生を語り、高森明さんが各章を総括しています。
近年、新聞やマスコミでよく耳にする「発達障害」は、外見だけでは普通の人と変わらない、目に見えない脳の機能障害です。
8人の当事者のうち7名が、大人になるまで診断を受けらなかった「中途診断者」です。
中途診断者たちは、多数派(発達障害のない人たち)にできて当たり前のことがなぜできないのかわからないまま
紆余曲折しながら苦労して生きてきました。
発達障害への知識も、7、8年前と比べると教育関係者の間に広がりましたが、
教育関係で当事者の生の声を聞いたり、当事者本を読んだりことのある方は少ないと思います。
16人に1人はいると言われている発達障害は、その当事者の生の声を聞かないと本当に理解ができません。
多数派(発達障害のない人たち)ができて当たり前の仕事ができなくて苦労したこと、未診断だった頃のつらさが
この本を読んでひしひしと伝わってきました。それでも、生きることをあきらめず、一生懸命生きて道を切り開いてきた著者たちの姿勢には感動するものがあります。
「発達障害を聞いたことがあるけれど、どういう気持ちを抱いているのか知らない」方へ。
ぜひ、この本を読んでいただくことをお勧めします。
当事者の声抜きの教育学を学ぶよりも、当事者の生の声を聞くことが、発達障害を理解する上で早道だと思います。