まず、人間の大脳について解説する。大脳の中でも“人間ならでは”の思考活動をつかさどっているのが「前頭前野」であり、この部分をしっかり育てていくことが大切だという。ヒトがものを考えたり、活動しているとき、脳のどの部分が使われているのか。本書ではカラー画像を使って脳の働いている部分を示し解説する。
たとえば、目で覚えようとするときよりも、書きながら覚えようとするときのほうが、脳の多くの場所が使われていることが分かる。音読は、黙読よりも働いている脳の範囲が広がっている。一桁(けた)の足し算をすれば、前頭前野は活発に働く。「読み・書き・計算は脳の全身運動」という著者の主張に、思わず納得してしまう。障害児の脳の機能回復にも、「読み・書き・計算」は有効だという。だから、脳の発達において重要な時期に当たる小学校低学年では、「寺子屋的」教育を実施していくべきだというのが著者の主張。
翻って、新しい学習指導要領における小学校低学年での「読み・書き・計算」は十分なのだろうか。不安を感じたとすれば、家庭でフォローしていくしかない。(清水英孝)