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消えた警官 ドキュメント菅生事件

価格: ¥1,785
カテゴリ: 単行本
ブランド: 講談社
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本格ミステリーのようなスリルを味わいながら、最後は冤罪の可能性に包まれたこの社会に生きる怖さに震撼させられる。 ★★★★★
 1952年6月2日、大分県菅生(すごう)村の駐在所で爆破事件が発生。共産党員二人が現行犯逮捕される。逮捕された二人はこの時間、村の実力者が営む製材所に勤めていたある男に呼び出されて現場近くにいたと証言。しかしその男・市木春秋は事件直後に姿をくらます。そしてやがてこの男が警察官であった可能性が浮上してくる…。

 本格ミステリー小説ばりの筋書きで進行する菅生事件はれっきとした実在の事件です。
 冷戦という時代背景で共産党に対する国家の厳しい目が向けられていた時期に起きた事件ですが、冤罪の様相を色濃く見せ始めると、弁護団やジャーナリストたちが事件の背後にある漆黒の闇をなんとか暴こうと奔走するのです。

 様々な新聞社・ラジオ局・通信社の記者たちが地道に足で稼いで調査報道に取り組む姿は大変ドラマチックです。市木という謎の男の素性を突き止め、やがてその潜伏先に突撃取材を敢行する記者たち。なんとか逃げられないようにとする記者たちと危機をすりぬけようとする市木の駆け引きもまるで映画のようです。

 そして弁護側が事件を冤罪であるとみなしていく推理過程とそれを裏付けるための科学実験の様子も非常にスリリング。失礼ながら戦後十年余の時代に、こうした科学捜査が存在していたことに新鮮な驚きを感じます。

 それにしても裁判の途上、警察当局・検察官そして判事までもがあたかもグルになって弁護側の主張を認めようとしない姿に、うすら寒いものを感じます。偏向ととられても仕方ないほどの裁く側の姿勢が、1950年代という特殊な時代の生んだやむをえないものであったのか。
 いえ、そうとはいえないでしょう。21世紀の現在でさえ、ここ数年大きな冤罪事件が明るみになっているほど。著者自身、半世紀以上も前に発生した歴史的な事件を今掘り起こそうと考えたのも、小泉政権が固執した「組織犯罪処罰法」の「共謀罪」新設に対する大きな危機感を抱いたから。冤罪の可能性をはらんだ社会に生きることの怖さに震撼させられます。

 手に汗握りながら事件の行方を追いかけ、一気に読み終えた一冊です。
事実関係だけでなく、当時の雰囲気も理解できる ★★★★★
「菅生事件」については、名前のみ知っていて、詳細は本書を読むまで知りませんでした。
本書を読むと、こんなにもお粗末なフレームアップがあったものだと思いますが、同時代では見えないものがあるのだと気付かされます。実際のところ、当時、一部の新聞社を、警察からリークされた情報を検証もせずに報道する方向へ走らせています。
当然ですが、当時の事実関係について、のちに法廷や国会で明らかになったことも含めて書かれていますが(事実関係だけであれば、ウィキペディアで知ることができます)、本書の最大の特色は、当時の世の中の雰囲気と、「調査報道」という報道の値打を改めて示したことでしょう。本書で描かれたのは、あくまで一つの事件についてなのですが、ほかの多くの事件について考えるときに、色々なことを示唆してくれると思います。
視点が一方的 ★★☆☆☆
弁護側から一方的に菅生事件について書かれたドキュメンタリー。特に、日本共産党とマスコミの活躍と反権力が強調されている。事件については、感覚的な論調と推測が多く、弁護側からみた小説的な事件像を基に話が進められている。もちろん「消えた警官」や警察には怪しい点が多々ある。また、当時のマスコミの論調はよく理解はできるものの、文中で資料を示しているのは、新聞(主として「赤旗」、「朝日」及び「毎日」)、雑誌等の報道内容ばかりで、菅生事件について素人の私には、事件の真実が見えてこない。事実に迫る学術的、論理的、客観的な分析がなくがっかりした。
ドキュメントのお手本。一読要 ★★★★★
「消えた警官」のタイトルからミステリー小説の新作かと勘違いしそうですが、
実際は、公開されたものはもちろん、入手困難と思われる資料を駆使して書かれ
た、国家警察による共産党員に対する駐在所爆破犯罪デッチアゲ事件の記録です。
今からは想像もつきませんが、共産党が武装闘争をはかっていた社会背景も丁寧
に書かれており、何故このような国家犯罪が行われたかがよく理解できます。
また、読んでいくうちに、「国家犯罪恐怖」「司法の公正さとは何か」「秩序の
維持と人権擁護とのバランスをどうはかるのか」等、考えさせられる点が次々と
心にわいてきます。学校では教えてくれない歴史の一つとして一読の価値がある
本です。