低視聴率と予算削減(宇宙船絡みのエピソードになると最小限のキャストしか使えない)に見舞われながらも、第3シーズンはこれまでと同様の面白さを維持し、番組のレギュラー陣に多くの見せ場を与えた。不眠症に悩むトリップ(コナー・トリニアー、以前にも増して快調)とトゥポル(ジョリーン・ブレイロック、今シーズンで髪型と衣装をチェンジ)がバルカン式のセクシーな神経マッサージについて会話するあたりなど、最高に笑わせてくれる。トゥポルが実は薬物中毒だったという設定は、ブレイロックの演技に感情的な深みをもたらした。その一方で、保安主任リード(ドミニク・キーティング)は、エンタープライズの軍事部隊MACOを率いるヘイズ少佐(頼もしい助っ人スティーブン・カルプ、当時は『デスパレートな妻たち』第1シーズンに出演中)と激しいライバル関係に。リードはMACOに不信感を抱いているのだ。ホシ(リンダ・パーク)とトラヴィス(アンソニー・モンゴメリー)については、うまくキャラクターが膨らんでいない。だが、ドクター・フロックス役のジョン・ビリングズリーは、一世一代の当たり役を得て、相変わらずの名演を見せている。特に、「フロックス船長の孤独(Doctor's Orders)」や「ライサリア砂漠幼虫(Similitude)」といったハイライト・エピソードでの活躍が見ものだ。後者では、トリニアーもビリングズリーに負けじと頑張っている。彼は、クローン人間の創造という倫理的に微妙な(だがファン受けのいい)問題に関わりを持つことになる。つまり、『スタトレ』がもっとも得意とする題材を扱ったエピソードということだ。
「留められない記憶(Twilight)」における“もうひとつのタイムライン”という題材も、『スタトレ』の伝統を受け継ぐものと言えるだろう。「新たなる脅威の兆し(Harbinger)」では、球体創造者と呼ばれる異次元集団の存在が発覚。彼らの球体は月ほどの大きさがあり、第3シーズンで描かれるエンタープライズの任務に影響を及ぼしていく。最後に、ストーリーの決め手として、アンドリア人のシュラン(ジェフリー・コムズ)を挙げておきたい。不気味な展開を燃せる今シーズンにあって、シュランはサスペンスと笑いの両方を提供し、惑星連邦成立以前の政治情勢に深みと一時的な協調をもたらす。このことは、シーズン・フィナーレ「最終決戦(Zero Hour)」の衝撃的な幕切れにおいて、より大きな意味を持つ。第4シーズンでのサプライズにつながるその展開は、『エンタープライズ』を初代シリーズ『宇宙大作戦』のタイムラインにいっそう近づけることになる。(Jeff Shannon, Amazon.com)