コトとスタッフは、手に汗握る冒険活劇を展開しつつ、未来の『スター・トレック』につながるエピソードを始動させる。たとえば、「ボーダーランド」、「コールド・ステーション」、「野望の果て」の3エピソードでは、アリク・スン博士(『新スター・トレック』のブレント・スパイナー)と彼の創造した超人的生命体“オーグメント” の悲劇的な運命が描かれる。『新スター・トレック』に登場、やはりスパイナーが演じるアンドロイドのデータは、この経験を踏まえて開発されたのだ。「狙われた地球大使館」、「陰謀の嵐」、「バルカンの夜明け」では、トゥポル(ジョリーン・ブレイロック)がバルカン星に帰郷する。この地には、伝説の哲学者スラクおよびシラナイトと呼ばれる過激派がいた。彼らは、バルカン最高司令部の歴史で決定的な役割を果たすことになる。その後の数エピソードでは、額の隆起を持たないクリンゴン人が存在する理由をドクター・フロックス(ジョン・ビリングズリー)が見つける。つまり、長年ファンの頭を悩ませてきた謎が解明されるのだ。前後編にわかれた「暗黒の地球帝国」は、初代シリーズの「イオン嵐の恐怖」と同じく、“鏡像世界”を扱っている。コトが“遊戯的なエピソード”と評しているとおり、最後に“鏡像世界”のタイトル・シークエンスが出てきたり、初代シリーズの「異次元空間に入ったカーク船長の危機」からU.S.S.ディファイアントが再登場したりと、遊び心いっぱいの内容となっている。“コンスティテューション級”の宇宙船のブリッジが見事に再現されたシーンで、むかしからのトレッキーはたまらない懐かしさを覚えることだろう。
最後の数エピソードでは、過激な排他主義者(ピーター・ウェラー)のために、惑星連邦の成立が危うくなる。彼の訴える孤立政策は、トリップ(コナー・トリニアー)とトゥポルを種族間の相互保護主義へと導く。シリーズ最終話「最後のフロンティア」は、一部の視聴者を失望させたかもしれないが、『新スター・トレック』のメンバーが登場してシ『スター・トレック』の過去・現在・未来に賛辞を送るというスマートな趣向を採用している。これだけの物語を大団円へと導き、かつ欲張りなファンを満足させることの大変さを思えば、『エンタープライズ』は満足のいく結末を迎えたと言っていいだろう。スタッフとキャストは、このことを誇りにしていい。(Jeff Shannon, Amazon.com)