本書によれば、年間40万トンとされる不法投棄量に関する環境省公式統計は、まったく実態をあらわしておらず、その100倍にも及ぶ産業廃棄物が闇ルートで垂れ流されているという。その隙間に、無許可の捨て場を用意する「穴屋」、ダンプで不法投棄を請け負う「一発屋」、さらにそれを仕切る「まとめ屋」などの違法業者コネクションが形成された。地下組織を背後にしたこのブラックマーケットは、年間1兆円規模にものぼる。環境経営を標榜する一流大企業から生まれ、許可業者を通じて処理されたはずの産業廃棄物も、最終的にはこうした闇ルートと無縁ではありえない。
財務分析を専門とする著者は、複雑に絡み合った問題の解決策として、安易な理想論に流れることなく、市場原理に基づいたリサイクルシステムの構築を提案している。とりわけ、最終処分場ではなく中間処理施設を増設すべきとの主張には説得力がある。縦割り行政を解消し、政官業が協力して新しいグランドデザインを描くことが喫緊の課題となっている。問題が顕在化している地域のみならず、全国各地の住民生活を脅かすことになるテーマだけに、基礎資料としての本書の価値は高い。(松田尚之)